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大迫勇也とブレーメンは大丈夫か。
EL狙いが一転、悪夢の残留争い。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/01/08 11:50
苦しむブレーメンを救えるか。2020年の大迫勇也はまずそのタスクに挑むことになる。
スルーパス1本で守備がズタズタ。
例えば、前線からプレスに行けない。M・エッゲシュタイン、クラーセン、サヒンがフォームを崩しているため、ボールを独力で奪えない。
そして、中盤へのサポートも少ない。ボールを取り切るという確信を誰も持てていないから、相手に寄せてもあっさりとかわされ、突破を許してしまう。DFは簡単に引きずり出されて、センターのスペースをどんどん空けていく。
本来ならば一番守らなければならないところを、自分たちから明け渡していっている。それでは勝てない。抵抗力が一切見られない、守備の軽さ。マインツ戦ではセンターからのシンプルなスルーパス1本で守備がズタズタになったほどだ。
タッチライン際、相手の左SBアーロンに3人でプレスに行きながら簡単に突破を許し、スローインにするわけでも、ファウルで止めるわけでもなく、易々とドリブルで運ばれて逆サイドへ展開されたシーンは、あまりにショッキングだった。
大迫が話していたチームの不調。
昨年、連敗続きの後にやっと引き分けた試合後に大迫勇也がこんなことを語っていた。
「シーズンを通せば絶対にこういう時期はあるし、どのチームでも起こりうると思う。大事なのは選手個々の気持ちの持ちよう。ボールを運ぶことにしろ、ファーストタッチにしろ、連敗しているときは前向きにというか、そういうプレーができない心境があった」
勝てないと、いつも通りにプレーするのが難しくなる。しかし今季前半戦のブレーメンは間違いなく良くないのに、良い時のプレーをしようとしているのだ。
前から連動して守備に行けないのに、フラフラッと守りに行く。攻撃の準備ができていないのにボールを放り込み、カウンターを許してしまう。大迫がどれだけ前線で体を張ってボールキープしようとしても、サポートに走る選手はほとんどいない。
良いときであれば後ろでパスを回していても焦りはない。だが、今は違う。ひとつひとつ展開を重ねるごとにプレッシャーが膨れ上がり、それが選手たちの判断を鈍らせ、不用意なミスへとつながっていく。
ならば守備ラインを深くして、相手を待ち構えて、必死の守りからカウンターを狙ってはどうか。そうした選択肢を取ることだって必要なときがある。
そもそもコンセプト、戦略、戦術は、自分たちの能力を解放するためにあるべきものだ。やろうとしているサッカー自体が素晴らしくとも、それが責任を逃れるための“アリバイ”になってしまっては、あまりにももったいない。