欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
大迫勇也とブレーメンは大丈夫か。
EL狙いが一転、悪夢の残留争い。
posted2020/01/08 11:50
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
欧州へ。
それがブレーメンの合言葉だった。今季こそヨーロッパリーグ出場圏の可能性がある7位以上でフィニッシュする。3年目の指揮を執るコーフェルト監督は、開幕前に目標を聞かれるといつも臆することなくそう明言していたし、それだけのレベルにきていると確信していた。自分たちは、表舞台に立つべきレベルまで戻ってきたのだ、と言いたげだった。
開幕から4カ月が経ち、ブンデスリーガは前半戦となる17試合を終了した。
だが、ブレーメンの居場所は優勝争いではなく、ヨーロッパリーグ圏出場争いでもなく、残留争い真っただ中の17位である。5節のRBライプツィヒ戦から17節のケルン戦までの13試合でわずか1勝。完全に迷走している。
15節ではバイエルンに1-6で一蹴され、さらに16節のマインツ戦はありえないほどのミスの連続で0-5と自滅した。
いったいどこでボタンを掛け違えたのだろう。
怪我人の多さを不振の理由に挙げる識者は多い。確かにそれは大きな問題だ。特にキャプテンのCBモイサンデルをはじめ、守備陣に欠場が多かったのが苦しい。ある時期は本来レギュラーの4バックがすべていない試合もあった。
「欧州」の目標がいつの間に……。
だが、それ以上に問題だったのは、「欧州」という響きのいい言葉が、自分たちの現状分析を難しくしたのではないだろうか。
シーズン前にどれだけ期待に胸を膨らませ、自信いっぱいに高い目標を掲げたとしても、現実は予定通りにいくわけではない。勇敢さを発揮するためには理性的な判断が必要だ。自分たちの立ち位置を見間違えると、あらゆる対策は方向性を見誤ってしまう。とはいえ目標を一度口にしてしまうと、それを引っ込めることは非常に難しい。
自分たちを熱狂させて、情熱を燃やすために掲げられた「欧州」というキーワードは、あるときから間違ったコンパスになってしまった。
できているときのイメージでプレーしようとするが、体も頭も心も追いついていないのだ。
昨シーズンであれば“ちょっとしたズレ”としてすぐ解決できていたことも、修復されることなく、どんどん傷口が開いていく。どんなシステムでプレーしても、どんな陣容で試合に臨んでも、ケアレスミスからリズムを崩してしまう。