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佐藤琢磨が次世代に
伝えたい喜びと悔しさ。 

text by

稲川正和

稲川正和Masakazu Inagawa

PROFILE

photograph bySPORTS BIZ

posted2020/01/15 11:30

佐藤琢磨が次世代に伝えたい喜びと悔しさ。<Number Web> photograph by SPORTS BIZ

ドライバーに必要な感謝と求心力。

「モータースポーツはスポンサーのご支援があって、エンジニア、メカニックと協力しながら、速いマシンに仕上げ、それをドライバーが全力で競うスポーツです。誰一人、どのパーツが欠けても成立しません。そのために、プロのドライバーは強い求心力を持ってチームの中心にいなければいけません。その道を歩もうとするには、コース上はもちろん、サーキットにいる間は1秒たりとも疎かにできないのです。『アカデミー』でもグリコさんというスポンサーがついて下さって、プロのメカニックたちが子どもたちのレーシングカートを整備してくれています。その人たちへの挨拶、感謝の気持ちを忘れてはいけません」

 佐藤が目をみはったのは、最後のレースで優勝した子ども以外、全員が悔し涙をながしていたこと。それだけ、子どもたちが真剣に取り組んだという証だ。そして、悔しさを知る貴重な経験も得た。「悔しさは成長の原動力」。多くのアスリートがその重要性を口にする。

 もちろん佐藤自身、今も、たくさんの悔しさを味わい続けている。喜びより悔しさのほうが多い。最後にこんな質問を佐藤に投げかけた。

――この1月で43歳になります。シリーズを戦う現役ドライバーでは上から2番目です。「引退」という言葉が脳裏をよぎることはありませんか。

「まったくありません。今は年間チャンピオンになることを最終目標に掲げて、挑戦するだけです。チャンピオンを獲ったら? うーん、どうだろう、わからないです。そのときにどんな気持ちになっているか、ですね。ただ、これだけは言えます。毎年、毎年、レーシングドライバーとしてスキルアップしているのを実感しているんです。あー、また巧くなったと(笑)。まだまだ伸びしろがあるということでしょうか」

 インディカー・シリーズに参戦して10年目の2019年は、シーズン2勝を挙げ、ストリート、スピードウェイ、ロードコース、オーバルとすべてのコースバリエーションで優勝したドライバーとなった。佐藤琢磨の2020年の挑戦がもうすぐ始まる。

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