ル・マン24時間PRESSBACK NUMBER
ピットに持ち込まれた「改善」。
より強いチーム作りを友山副社長に聞く。
posted2019/07/09 16:30
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
TOYOTA
「さあ、すべての観客を惹きつけて、熱狂させてやろうじゃないか。最後に我々にとって、すごく大切なモットーを確認しよう。みんな準備はいいかい? ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン!」
監督から現場のスタッフ、チームの運営に携わるすべての人間が狭い部屋に集まり、一斉に鬨の声を上げる。お互いの決意を確認するためだろう、同僚と改めて固い握手を交わす人間もいれば、ひとり静かにぐっと拳を握りしめる者もいた。
これはラグビーの試合ではない。驚くなかれ、WEC(FIA世界耐久選手権)の最終戦、ル・マン24時間耐久レースに出場したTOYOTA GAZOO Racingで、6月15日決勝当時の朝に行われたミーティングの模様である。声の主はWECチームの代表、村田久武だ。
この光景は衝撃的だった。
トヨタ2000GT、スープラなどの系譜。
そもそもモータースポーツの世界は、欧米型の典型的な階級社会であり続けてきた。頂点にはチームの顔でもあるドライバーが立ち、その隣には監督や首脳陣が並ぶ。そしてレースエンジニアやメカニック、そしてサポートスタッフの順にヒエラルキーが存在しているのが常識だった。
ドライバーやエンジニア、メカニックが分け隔てなく床に座り、一緒にミーティングに出席している場面など見たことがない。トヨタは新たな組織カルチャーをモータースポーツの世界に持ち込もうとしている。
それと同時に改めて痛感したのは、トヨタがレースに参加していることの意外性だった。
むろんトヨタには、スポーツカーやモータースポーツの伝統も脈々と受け継がれてきた。1967年に登場したトヨタ2000GTは、日本の自動車産業界が産んだ初のスーパーカーとして007の映画でも採用されたし、今年の5月にはその系譜に連なるトヨタ・スープラの最新モデル、GRスープラが発売されて熱い注目を集めている。