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ベルマーレ残留の今、騒動を考える。
美談でなくJリーグが先に進むため。
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph byGetty Images
posted2019/12/25 08:00
参入プレーオフの末にJ1残留を果たした湘南ベルマーレ。所属する選手には能力があるからこそ、2020年の逆襲に期待したい。
スポーツくじの対象でもある。
裁定を発表する記者会見で「処分は軽いのではないか」と問われたとき、村井チェアマンは「34節しかないJ1リーグにおける5試合は非常に重い」と答えた。その通りだと思う。ましてJリーグはスポーツくじの対象でもある。一刻も早く調査結果を出し、必要なら制裁を科し、事態を収束してほしかった。
今回に関して言えば、通報から調査までに1カ月以上(その間にスクープされた)、調査終了から結果が出るまでにまた1カ月以上(この間湘南は待ち続けた)、結局3カ月を費やしている。
調査によって得た内容を評価するのに時間を要するのはわかるが、Jリーグ側の弁護士のヒアリングが終わってから調査を開始した湘南側の報告書の方が先にできあがっていたことからみて、これはあまりに遅く映った。
報告書に対する強い疑問。
もう1つ、そんなふうに時間をかけて仕上げられた報告書の内容と公表には強い疑問を感じた。
報告書の作成にあたっては「『誰が言っているのか』、『誰がこういう目にあったのか』というところがなるべく特定されないように、わからないようにしないといけないということ」に留意したと担当した弁護士は説明していたが、実際にはJリーグのホームページに掲載されている「要約・公表版」でさえ、証言者が容易に特定できる内容だった。
たとえば、上記の福島キャンプでの「全治8か月の怪我」。報告書には記載はないが、起きたのは7月25日で、怪我は「前十字靭帯損傷」である。なぜなら湘南のホームページに「負傷に関するお知らせ」として発表されているからだ。もちろん「誰がこういう目にあったのか」も一目瞭然である(湘南に限らず、Jクラブがこうした情報をリリースしていることを担当弁護士は知らなかったのだろう)。
当然、その他の掲載内容にしてもサポーターなら特定可能なものが多い。
そのことは僕がここで書くまでもない。弁護士もリーグ事務局も「サポーター」についてよく知らなかったのかもしれない。
いや、皮肉を言っている場合ではない。“二次被害”をもたらしかねない報告書だった。事実、ネットで誹謗中傷された選手もいる。
当然、湘南の選手やスタッフをはじめチームにいる者にとっては、そのほとんどが特定可能な内容であることは言うまでもない。結果、報告書の公表を機に「通報者探し」が再燃するという残念な事態も招いた。
そもそもこの報告書を公表する意味があったのかどうか。リーグやクラブ、あるいは関係者の間で共有する必要はあるにしても、社会に対して公表するのは「制裁決定について」のリリースだけで十分だったのではないか(そこにも対象事象はちゃんと書かれている)。
報告書公表による波紋の大きさを見るにつけ、疑問を感じずにはいられなかった。