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裏を制する者がJリーグを制した!?
データが示した2019戦術トレンド。
posted2019/12/25 12:00
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
Getty Images
裏を制する者がJを制す。
ざっくり言うと、そんなシーズンだった。2019年のJ1リーグのことだ。文字どおり、最終ラインの「裏」事情(攻防)に明るいチームの躍進が際立った。
優勝を争った横浜F・マリノスとFC東京はその象徴だ。徹頭徹尾、守備側のライン裏を突いて勝利を積み上げている。そこで強力な武器になったのが走力だ。仲川輝人(横浜FM)や永井謙佑(東京)といったJ1屈指のスピードスターが猛威を振るった。
速い、速い、とにかく速い。ひとたび裏へ走れば電光石火。たちまちフィニッシュまで持っていった。スピードに不安を抱える守備者にとっては受難の1年だったか。
横浜FMとFC東京の違い。
横浜FMと東京の走力はデータからも読み取れる。1試合平均のスプリント(時速24km以上)回数だ。1位が横浜FM、2位が東京だった。とくに横浜FMの193回はJ1の平均値(160回)を大きく上回った。昨年が175回(3位)だから大幅アップだ。
スプリントと言っても攻守の両面で用途はさまざま。攻守の切り換えや、それにつながる攻撃側(ボール保持者)への圧力でも発動する。横浜FMと東京はその方面でもよく走ったが、ライン裏への鋭いアクションの連続によって大きく数字を伸ばしてもいた。
ただ、横浜FMと東京ではチームの設計が違っている。分かりやすいのは1試合平均のボール保持率だろう。横浜FMは61.4%。J1では断トツの数字だ。一方、東京のそれは47.8%で、下から5番目。いかにも堅守速攻型の数字らしい。
東京の場合、ある程度、相手を引き込んで守ることで速攻に転じるときには敵陣に大きなスペースがある――という設計だ。一方の横浜FMはパスをつないで攻め込んでいく。それでも面白いようにライン裏を突く仕組みを整えているあたりがミソだ。