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大坂なおみに新たなる敏腕コーチ。
「SAP」と提携、データ活用の達人。 

text by

山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byGetty Images

posted2019/12/24 11:40

大坂なおみに新たなる敏腕コーチ。「SAP」と提携、データ活用の達人。<Number Web> photograph by Getty Images

2020年の大坂なおみを支えるウィム・フィテッセ。彼がコーチとしてかかわった選手はトップ経験者ばかりだ。

「データを見せれば対立の余地はない」

 データに依存しすぎればテニスがつまらなくなるという意見を持つコーチもいる。日本のツアーコーチたちからも「いずれコーチは要らなくなるかも」という危惧を聞いたことがある。

 しかし、とにかくフィセッテはこのテクノロジーの活用を強く支持し、もっとも積極的に活用しているコーチなのだ。以前、フィセッテはこう語っている。

「選手には選手の感触や気持ちがあって、コーチにはコーチの見方や感じ方がある。それが食い違うためにぶつかり合うことがあったが、今のようにリアルタイムでスタッツやデータを見せることができれば対立する余地はない。データは紛れもない事実なのだから」

なおみが冗談めかして話したこと。

 今、大坂が求めるものは、データに基づいたフィセッテの明確な戦術アドバイスなのだろうか。

 つなぎのコーチ役を担った父しかいない状況でも東レパンパシフィック・オープンと北京に続けて優勝した大坂だが、その中国オープンやツアー最終戦の深センでの記者会見で「新しいコーチは必要ないのでは?」と聞かれてこう答えていた。

「父のオンコート・コーチングを聞いたことがある? 落ち着け、しか言わない。戦術とか一切ないの。ほんとムカつくんだけど、多分その怒りをエネルギーにして勝ってるんだと思う(笑)」

 バインとの蜜月期間でも、大坂は彼のことを戦術に長けたコーチだとは言ったことがない。バインは大坂を精神的にリラックスさせることで本来の力を発揮させた。

 フィセッテは、データを知って有効な戦術を理解することが、選手の心も強くすると考えている。

 アザレンカやケルバーといった、すでに実績も経験もある選手たちの復活に彼が役立てたのは、その実績や経験が災いしていた迷いを取り除き、やるべきことを明確にさせたからだろう。

【次ページ】 ただ、ほとんど1年前後で……。

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