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大坂なおみに新たなる敏腕コーチ。
「SAP」と提携、データ活用の達人。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2019/12/24 11:40
2020年の大坂なおみを支えるウィム・フィテッセ。彼がコーチとしてかかわった選手はトップ経験者ばかりだ。
アザレンカ、バインとの数奇な縁。
クライシュテルスがベルギーに作ったアカデミーの専属コーチにという誘いを断り、世界トップレベルのプレーヤーに同行するツアーコーチという道を選ぶと、2013年にドイツのリシツキのコーチに。リシツキはこの年のウィンブルドンでキャリア初のグランドスラム決勝に進出した。
また、2018年に全仏オープンで悲願のグランドスラム初制覇を果たしたハレプだが、グランドスラムで初めて決勝に進出したのはフィセッテをコーチにつけていた2014年だ。
そして、2012年に世界1位に上り詰めたアザレンカにコーチを依頼されたのは2015年。このとき彼女のランキングは50位台まで落ちていたが、翌年にインディアンウェルズとマイアミの両大会を制する<サンシャイン・ダブル>を達成し、トップ5にも返り咲いた。
ちなみにこの期間、アザレンカのチームでヒッティングパートナーをしていたのがサーシャ・バインである。
近年は2017年にコンタをウィンブルドンで初のベスト4へ導き、2018年には前の年にスランプに陥っていたケルバーのウィンブルドン優勝までの道のりを支えた。この功績によって、昨年の年間最優秀賞コーチの座をバインと争った候補者の1人にも挙げられた。
強みはSAPと提携したデータ活用。
さて、その実績は十分にわかった。ではこのコーチは何が強みなのかというと、データの活用である。WTAは2013年からドイツのソフトウェア会社『SAP』と提携し、2015年からはオンコート・コーチングにおいて同社の提供するリアルタイムのデータ分析アプリを使用することを認めている。そしてフィセッテは、そのSAPでテニスコーチとしては唯一のアンバサダーを務める。
SAPは今年、そのアプリに『パターンズ・オブ・プレイ』と名付けた新たな機能を追加。あらゆる選手のラリーのパターンや傾向を、サーフェス、対戦相手のランキング、大会、ラウンドなどさまざまな条件の下で分析することができるという。