テニスPRESSBACK NUMBER
大坂なおみに新たなる敏腕コーチ。
「SAP」と提携、データ活用の達人。
posted2019/12/24 11:40
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
大坂なおみが2020年をともに戦う新コーチを発表した。
去年の今頃は、大坂を成功に導いたサーシャ・バインがWTAの年間最優秀コーチに選ばれ、2019年も大坂とともに歩むことに誰も疑いすら持っていなかったものだ。
全豪オープン優勝直後、衝撃の解任劇からひと月後にジャーメイン・ジェンキンスが新たなコーチとして登場したが、彼とも全米オープン後に契約を解消。シーズンいっぱいは父親のレオナルド・フランソワが臨時コーチを務めてきた。めまぐるしく動く女子テニスプレーヤーとコーチとの関係の中でも、一人の選手の周りだけでこれほど慌ただしく動いた例は珍しい。
女王の座を失し、大事なシーズンを控えた今、次を誰の手に委ねるのか。
メディアやファンの関心に大坂とチームが出した答え――。「ウィム・フィセッテ」という名を聞いて何者かわかる人は、相当のテニス通に限られる。しかし、たとえピンとこなくてもこの39歳のベルギー人が過去にコーチについた選手の顔ぶれを見れば、<敏腕>という紹介にも多くが納得するに違いない。
クライシュテルス、クビトバも。
その顔ぶれとは、キム・クライシュテルスに始まり、順にサビーネ・リシツキ、シモナ・ハレプ、ビクトリア・アザレンカ、ペトラ・クビトバ、サラ・エラーニ、ジョハナ・コンタ、アンジェリック・ケルバー。トップ経験者ばかりで、うち5人がグランドスラム・チャンピオンである。
ただ、評価の基準はその顔ぶれの豪華さではなく、彼女たちがフィセッテとともに過ごした時間の中で何を成し遂げたかだろう。
フィセッテのコーチとしてのキャリアは元女王クライシュテルスとともに始まった。
'07年に23歳の若さで“寿引退”したクライシュテルスは出産を経て、26歳のときに現役復帰するが、復帰後初のグランドスラムとなる2009年の全米オープンで見事優勝。復帰から1年半の間に、第1のキャリアでは1度しか届かなかったグランドスラム・タイトルを3つも手に入れた。この劇的復帰を支えたのが、以前はヒッティングパートナーを務めていたフィセッテだった。