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「表彰式で会いましょう」武豊が果たした“イチローとの約束”…ドウデュース“王者の末脚”をどう引き出したのか?「いい流れではなかったが…」
posted2024/11/25 17:22
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Keiji Ishikawa
超大物外国馬をはじめとするライバルたちを、日本の総大将がとてつもない切れ味でねじ伏せた。
外国馬3頭を含む強豪14頭が揃った第44回ジャパンカップ(11月24日、東京芝2400m、3歳以上GI)で、武豊が騎乗した1番人気のドウデュース(牡5歳、父ハーツクライ、栗東・友道康夫厩舎)が優勝。GI5勝目を挙げたと同時に、史上3頭目の「秋古馬三冠制覇」へ王手をかけた。
超スローペースで最後方「いい流れではなかった」
武は、横並びのスタートを切ったドウデュースの手綱を引いて抑え、他馬を先に行かせて1、2コーナーを回った。ドウデュースは指示に反して前に行きたがったが、武は重心を後ろにかけて宥め、向正面に入ったときには最後方に下げていた。
1000m通過は1分2秒2というスローペース。こうなると、どの馬も最後に速い脚を使えるので、普通は少しでも前につけたいと考えるものだが、武は最後尾から動かなかった。これといった逃げ馬がいなかったので、こういう流れになることはある程度想定していたという。
「思った以上にペースが遅くて、けっしていい流れではなかったですけど、スタイルを変えないつもりで乗っていたので、折り合いに苦労しました」
その言葉通り、3コーナー入口でもまだ重心を後ろにかけて手綱を引き、彼にしては珍しく、頭が小さく揺れるほど、馬が引っ掛かっていた。3、4コーナー中間地点で、先頭との差は8馬身ほど。
4コーナーに入ると、武は大外に進路を取り、手綱を持ったままで内の馬たちを次々とかわしていく。
「ぜんぜんペースが上がらず、馬が本当に走りたがっていたので、抑えていた手綱を緩める感じで、ある程度行かせたらものすごく勢いがついてしまいました」
直線入口で外からアイルランドのオーギュストロダンに並びかけて軽く促すと、瞬時に同馬を置き去りにしてさらに加速。ラスト300m地点で先頭に並びかけた。同じように後方一気のレースをした前走の天皇賞・秋よりも、かなり動き出しが早くなった。