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明治ラグビーに「隙ナシ、油断ナシ」。
崩された“名作”と早稲田のメンタル。
posted2019/12/04 11:50
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Yuki Suenaga
強い! 強すぎる!
25年ぶりの全勝対決となった早明戦(当時の監督は明治が北島忠治御大、早稲田が宿沢広朗氏)。
熱戦が期待され、たしかに前半は見ごたえがあった。スコアは明治が10-7とリード。記者席では「名作」誕生の気配が漂った。ところが……。
後半は明治が圧倒、アンストラクチャーからのスピードあるアタック、ラインアウトモールなど多彩な攻撃で4トライ。早稲田に反撃の隙すら与えなかった。
今季の明治を見ていると、「隙ナシ、油断ナシ」という言葉が浮かんでくる。
ワールドカップが終わって対抗戦が再開した11月は、ライバル校を次々と粉砕、慶応には40-3、帝京大には40-17。そして今回の早明戦では36-7。
まさに、明治無双といった趣である。
ひょっとして、史上最強?
昭和の時代、明治のキャラクターといえば、体も大きく才能にあふれてはいるけれど、憎たらしいほど強すぎるということはなかった。どこか憎めない集団だった。
ところが、今季の明治にはとにかく隙がない。
往年の「前へ」のスピードは確実に遺伝、さらにはディフェンスで「横」の動きに対しても俊敏性を見せつけ、最後の最後まで綻びを見せることはなかった。
ひょっとして、「史上最強の明治」なのではないか?
隙が無い証拠は、試合後の記者会見の武井日向主将(4年・國學院栃木高)の言葉にも表れていた。私が「後半に入って、早稲田の疲れをどのあたりに感じていたか?」という質問に対して、主将はこう答えた。
「正直、疲れていたか具体的には言えませんが、こちらが後半に入って2本トライを取った後に、早稲田の選手たちがメンタル的に『あぁ』となっているのが見て取れたので、メンタルの部分から崩していけたのは、勝利に大きく影響したと思います」
この言葉は衝撃的だった。
明治がメンタルで早稲田を崩す時代が来るとは……。