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選手権最強の初出場・興國高校。
刻み込まれた「テクニックは永遠」。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2019/11/30 11:40

選手権最強の初出場・興國高校。刻み込まれた「テクニックは永遠」。<Number Web> photograph by Takahito Ando

監督就任14年目、興國高校を初の高校選手権出場に導いた内野智章監督。ここ数年は多くのJリーガーを輩出している。

結果よりも過程を重視する理由。

 選手権を軽視しているわけではない。もちろん、戦う以上は勝利を目指さないといけない。ただ、ピッチに立つスタメンの11人だけにフォーカスし過ぎてもいけないし、その選手たちに負荷をかけ過ぎてもいけない。育成と結果。この年代の指導者は常にこの狭間に悩まされる。

 内野も決して「育成」だけをやっていればいいという考え方ではない。試合に勝つこと、大きな大会に出ることで得られるものがあることは理解している。

「勝つことだけが目標になってしまってはいけません。選手権はお祭りで、例えば3000円使ってくじ引きをして、1回当たりが出るかどうか。当たることよりも、その元手となる3000円を貯めるまでの過程が重要だと思っているんです。当てることだけを考えると、その過程を軽んじてしまう。

 それに大阪は激戦区で、毎年狙って出場し続けられるような地域ではないんです。チーム数も多い中で出場できるのはたった1校。大阪代表として、連続して出場することも本当に難しい。選手権に毎年出れる大阪のチームがあれば、全国で4強には入れると思う。連続出場ができない地域だからこそ、出場することだけに執着しすぎたら、育成がおろそかになりますから」

年齢を重ねても「テクニックは永遠」。

 監督に就任して今年で14年目。内定者を含めてすでに15人のJリーガーを輩出し、来年以降もその数は増えていくだろう。「自分たちのサッカー」にはめ込むのではなく、相手を洞察した上でのアクションサッカーを展開する。

 冒頭の言葉は相手の戦術、やり方が変化していく中で、打開していく引き出しを増やすという理念と信念がにじみ出ていたからこそ、腑に落ちた。

「引き出しが増えれば、それを生かそうとする技術の種類も増える。この先、年齢を重ねても、セルジオ越後さんくらい上手かったら、サッカーをずっとプレーできますよ。人間は加齢によって体力が落ちていくもの。年齢に関係なくフットボールを楽しむためには技術が必要なんです。おじいちゃんでも技術があれば、走れなくてもプレーできる。

 つい最近までの僕らのウェアには『テクニックは永遠、フィジカルは衰退していく』と刻んでいたんです。孫とサッカーが楽しめる選手が増えてきたら、日本は世界のトップ10に入れると思います」

 関西の新興勢力・興國高校。「最強の初出場校」は、全国制覇という言葉に縛られることなく、初めての選手権でチームとしても、個々としてもフィードバックすべき経験を積み上げていくはずだ。

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