“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
選手権最強の初出場・興國高校。
刻み込まれた「テクニックは永遠」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/11/30 11:40
監督就任14年目、興國高校を初の高校選手権出場に導いた内野智章監督。ここ数年は多くのJリーガーを輩出している。
プロ注目の2年生たちの躍動。
プリンスリーグ関西第16節の神戸弘陵高戦。
興國高はこの試合に向けた戦術を準備していたが、対する神戸弘陵高はこれまでとメンバーを大幅に変更してきた。さらに興國高は田路、高安の2人が内定先のJ2金沢の練習参加のため不在。また、ほかの主軸メンバーの代わりにトップチームデビューとなる2年生が2人も出場していたことも響き、試合立ち上がりから苦労するシーンが目立っていた。
内野はベンチから相手の変化に対するヒントを与えながらも、ピッチに立つ選手たち自身で解決してくれることを望んだ。
「経験のある選手は相手の変化に気づいて対応していましたが、初出場となった選手は少し混乱していた。なので、少し今日は僕がゲームに介入してしまいましたが、ハーフタイムや試合後に、起こった現象などを丁寧に話せば理解してくれる。その繰り返しが大事だと思っています」
内野の狙い通り、興國高は徐々にリズムを取り戻していく。
特筆すべきはすでにプロから熱い視線を送られる2年生たちが落ち着いたプレーを見せたことだろう。
エースナンバー「10」を背負い、キャプテンも務めるMF樺山諒乃介、先輩・古橋のようにゴール前での引き出しが多いFW杉浦力斗の2枚看板に、相手の逆を取るプレーが得意のMF湯谷杏吏、サイドでの引き出しの多さが目立つMF南拓都など多彩な攻撃陣。守っては平井駿助と中島超男のCBコンビ、キャッチングのうまさとビルドアップ能力に長けたGK田川知樹と、レギュラーには再来年のプロ入りが有力視されるメンバーがそろう。
「選手権は連戦、相当きつくなる」
彼らが序盤の不安定さを立て直すと、後半はその樺山らに代わった選手たちがボールを動かしながら、バリエーションある攻撃を組み立てていた。
結果は0-0のドロー。スコアは動かなかったが、興國高にとって課題と収穫の両方がはっきりと出た実りある試合だった。
「選手権は連戦。神戸弘陵戦で足をつった選手がいたのですが、もしこの状態で『明日も試合ですよ』となったら相当きつくなる。だからこそ、ローテーションでやっていかないといけない。なのに、今日は主力4人がいないだけでノッキングを起こしてしまっている。選手権に向けて、そうならないように準備したいと思います。プリンス関西を通じて、ピッチ上で情報を共有できる選手を増やしていくというテーマでやっています」