“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
選手権最強の初出場・興國高校。
刻み込まれた「テクニックは永遠」。
posted2019/11/30 11:40
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「時代でシステムや戦術は輪廻しているんです。だからこそ、その時代に即した流れに対応できる指導をしていかないといけないんです」
この言葉を発したのは大阪・興國高校サッカー部の内野智章監督だ。興國高といえば、ここ数年多くのJリーガーを輩出しており、今年もMF田路耀介とDF高安孝幸の2人がJ2ツエーゲン金沢への内定を決めている。11月のキリンチャレンジカップで日本代表に選出された古橋亨梧(ヴィッセル神戸)も同校のOBである。
そんな実績を持つ興國高だが、これまで高校サッカー選手権への出場はなかった。しかし、今年の大阪府大会を制し、ついに初の全国大会となる選手権出場権を獲得した。「最強の初出場校」と呼ばれるなど、大会前から大きな話題を生んでいる。
勝つだけではいい選手は集まらない。
内野が興國高サッカー部の監督に就任したのは2006年のこと。同校はもともとサッカーとの縁が深く、セレッソ大阪の下部組織の選手たちが多く通っていた。杉本健勇(浦和レッズ)や南野拓実(ザルツブルク)らも興國の門をくぐっている。
だが、一方で内野がサッカー部監督に着任した当時、部員はわずか12名。強化に本腰を入れようという、まさに創成期のタイミングだった。
「大阪は学校数も多くて、選手の行き来も激しい地域。1度全国大会にぽっと出ても、それで選手が集まるのかと言ったら、そうではない。この大阪でいい選手を集めてサッカー部を育てようと思ったら、継続した何かがないと集まらない。
だからこそ、勝利至上主義ではなくいい選手を育てる。そして、たとえプロになれなくても孫の代までサッカーを楽しんでくれるような選手を、興國から輩出したいと思うようになりました」