プロ野球亭日乗BACK NUMBER
プレミア12初戦で薄氷の逆転勝利。
「国際試合では逆方向」を徹底せよ!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2019/11/06 12:00
ベネズエラ戦の8回、勝ち越しの押し出し四球を選びガッツポーズする近藤。
「国際試合では逆方向」
そこで思い出すのは過去のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)など侍ジャパンの常連だったソフトバンク・内川聖一内野手のこんな言葉である。
「国際試合では逆方向。これができないと絶対に打てない」
実はこの日の侍ジャパンが放った安打8本に、その答えはある。
菊池が放った3本の安打のうち5回の右翼線二塁打を含めた2本は右方向への打球だった。もう1人、2安打を放った浅村も4回にチーム初安打となる右前安打を放つと、6回には中越えに二塁打とやはりセンターから右を意識した打球なのである。内野安打2本を除く6安打中で5本が逆方向への安打だった。
要は強引に引っ張るのではなく、ポイントを少し手元側に寄せてしっかりと逆方向を意識した打撃の必要性だ。それができないとアメリカや中南米の投手の動くボールにはどうしても対応しづらくなる。国際試合では逆方向への意識は必須だということなのだ。
なぜかドゥブロンが交代してくれた。
典型的な例がこの日のベネズエラ戦でも先発左腕のフェリックス・ドゥブロン投手だ。この左腕は2012年と'13年にはボストン・レッドソックスで先発ローテーションの一角を担って2年連続11勝を挙げている“本物”の投手だった。
「速いというわけではないがカットボールが右打者の内角に鋭く切れ込んできたり、手元でかなり動いて手こずった印象がある」
こう稲葉監督も振り返るように、4回で放った安打はわずかに1本。日本サイドから見ればこのドゥブロンがなぜか4回68球で交代してくれたことが、この試合の1つの大きなポイントだったことになる。
しかしこうしたメジャー経験のある本格的な投手を相手に前さばきの打撃で強引に引っ張っていくと、むしろ差し込まれて相手の術中に嵌ってしまう。