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ベスト8の戦いはやはり未知だった。
南ア戦でジャパンが持ち帰った経験。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/10/24 11:50
南アフリカのディフェンスは最後まで統率が取れていた。日本にはまだ、やれることがあるのだ。
「やることいっぱいありますよね」
南アフリカには厚みがあった。
稀代のコミュニケーターであるヘッドコーチを抱えるスプリングボクスは、決勝でニュージーランド、イングランドを倒す底力、そして主将の出自を含め、ストーリーを持っている。
試合後、日本の選手のなかでもっとも実感がこもった言葉を発したのが、PRの稲垣啓太だった。
「スクラムに関しては、前半はいい勝負が出来てましたけど、後半に入ってスクラムの反則が得点に直結し、モールもやられて、それが敗因になりましたよね。準々決勝を勝つには、もう一段階、セットピースのレベルを上げないといけないと思いましたし、やることいっぱいありますよね、本当に」
やることいっぱいありますよね。
なんと前向きな言葉であることか。
W杯はまだ準決勝以降の戦いが残されているけれど、来年の6月、初夏のテストマッチシーズンでの日本代表の登場が待ち遠しい。
4年後、彼らはもういない。
その一方で、同じメンバーの日本代表が戦うことはもう二度とない。
トンプソン。
田村。
福岡。
彼らは4年後のW杯にはいない。まさに、一期一会。
東京、静岡、豊田、横浜で起きた物語を、ずっと忘れないでいようと思う。