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沢木敬介が語る南ア戦勝利への道筋。
「ハイパント、ペナルティの重み」
text by
沢木敬介Keisuke Sawaki
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/10/20 09:00
W杯開幕前のテストマッチで南アフリカに敗れたが、田村優のプレーとキックが冴えれば準決勝も見えてくるはずだ。
南アBKは前がかりな守備をする。
日本のフィールドポジションをコントロールするのは9番と10番、流大と田村優です。できるかぎり敵陣でプレーする時間を増やし、アイルランド戦やスコットランド戦のように、短いパスでボールをつなぐ。簡単に相手にボールを渡さないことが大事になってくると思います。
ちなみに、南アフリカのBKのDFラインはやや上がりが早く、プレッシャーをかける守備をする傾向があります。特にFBは早いタイミングで前がかりなディフェンスをする。そこの裏をBKの外の選手、例えばラファエレティモシーや松島幸太朗がキックなどでつけると一気にビッグチャンスになる可能性があります。
セットピースでいうと、スクラムは十分に対抗できる。9月はやや押されたシーンもありましたが、あの時とはメンバーも異なる。スコットランド戦で負傷交代した具智元が戻って来れば心強い。南アフリカのスクラムをバシッと抑えるシーンを見たいです。彼は本当に強いですから。
一方でラインアウトは、とにかく高い。コンテストされてマイボールを奪われると苦しくなる。長身FWをかいくぐるような工夫は必要となってくるはずです。
不用意なペナルティは3点に変わる。
これまでの予選プールと異なる点があるとすれば、「ペナルティの重み」。決勝トーナメントは1つの反則がガラッと流れを変える可能性があります。
これまでは、例えば日本が自陣でペナルティを犯したとき、ボーナスポイントを狙ってラインアウトやスクラムを選択されるシーンがあったと思います。でもここからは1点差でも勝てばいいという状況。当然のようにキックで得点を重ねることが予想されます。
つまり、不用意なペナルティは相手の3点に変わるわけです。このレベルになれば、どの国にもいいキッカーはいる。拮抗したゲームではキックの差が勝敗を分けるのです。
裏を返せばそれは日本にも言えること。敵陣で長くプレーすることで、相手の反則を誘発できる。これからの戦いでは田村のキックはより重要となります。