ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
ジダンが抱える「解任」の時限爆弾。
スターの“働き方改革”は成功するか。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byGetty Images
posted2019/08/31 19:00
ホーム開幕戦となった第2節バジャドリー戦を引き分けるなど、未だ見通しが悪いレアル・マドリー。頼みは負傷明けのアザールぐらいか。
何を言うか、ではなく、誰が言うか。
「素晴らしいゲーム。カギは守備をしっかりやったことだ。とくにギャレス・ベイルとビニシウスの守備の仕事が重要だった」
セルタを一蹴した開幕戦でジダンがわざわざ両翼の2人を褒めたたえたのも、攻守のバランスを保つための生命線と踏んでいるからだろう。
しかし「守れ」と言って、そのとおりにやってくれるなら、何の苦労もありゃしない。
腹の底で「我こそ戦術兵器」と自負するような特殊能力者ばかり。どんなに理屈を並べたところで、素直にうなずくわけがない。頭でっかちの戦術家など一斉にそっぽを向かれるのがオチだろう。
何を言うか。おそらく、重要なのはそこではない。誰が言うか。タレント群に耳を傾けるに値する監督だと思われなければ、説き伏せるのは至難の業だ。それも、可能な限り、個々の「表現の自由」を容認するスタンスと引き換えだろう。
焦点はジダンのカリスマ性。
その点、ジダンには他の指導者にはない強みがあった。スター選手をも引きつけるカリスマだ。初めてマドリーの監督に就任した頃、モドリッチがこう話している。
「あのジダンが目の前で話しているんだ。誰もが彼の言葉に耳を傾けるだろう」
だが、肝心のカリスマは現在進行形なのかどうか。
ジダンの構想外として放出をささやかれながら残留した格好の面々をどこまで束ねられるのか。どこか浮かない表情でピッチに立つベイルの取り扱いを含め、火種はそこかしこにくすぶっている。