ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
ジダンが抱える「解任」の時限爆弾。
スターの“働き方改革”は成功するか。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byGetty Images
posted2019/08/31 19:00
ホーム開幕戦となった第2節バジャドリー戦を引き分けるなど、未だ見通しが悪いレアル・マドリー。頼みは負傷明けのアザールぐらいか。
C・ロナウドにはないアザールの強み。
背番号は7。C・ロナウドのそれを引き継いだ格好だが、ガンガン点を取るようなタイプではない。キャリアハイは16得点。昨季もそうだった。
すでに28歳。選手として、ほぼ完成されている。急にゴールマシンへ大化けするとは考えにくい。反面、アシスト量産型としては十分に計算できる。昨季のアシスト数は15だ。イングランド・プレミアリーグで最多の数だった。
つまり、得点とアシストの数を合算すると、計31になる。もちろん、リーガ初挑戦やチームメイトとの化学反応など考慮すべき点は少なくないものの、額面どおりに働けば数字上の問題はクリアできそうだ。
先代とは違い、空陸自在という使い勝手の良さはない。ただ、単騎で狭いスペースを攻略できるのは大きな強みだ。自陣からの速攻はもとより、敵陣に押し込んでの遅攻でも決め手になりうる。
昨季は戦術的縛りの多いマウリツィオ・サッリ(現ユベントス監督)との折り合いの悪さが取り沙汰されたが、新たに仕える相手は敬愛するジダンだ。それもアザールに枷をかけるような指導者ではない。神出鬼没、変幻自在に立ち回る条件は整っていると言ってもいい。
量よりも質を求められる新エース。
ただ、数字の埋め合わせだけでは不十分かもしれない。いつ、どこで決定的な仕事をやってのけるのか。問われているのは量(数字)以上に質(中身)だろう。
バルサとのクラシコはもとより、CLにおける大一番で勝利をもたらす働きができるかどうか。そこで沈黙すれば、容赦のない批判やブーイングを浴びかねない。重圧の大きさは従来の比ではないはずだ。
俺がやらねば誰がやる。
古来、そうした主役意識を持ち、雑音にも動じず、期待に応え続ける人だけが天下のマドリーのエースに君臨してきた。果たして、アザールがその器かどうか。