ぶら野球BACK NUMBER
1日かけてプロ野球を遊び尽くし、
東京ドームと選手の巨大さに驚く。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byYasutaka Nakamizo
posted2019/08/17 11:40
左からスポーツ報知の加藤弘士さん、川相昌弘さん、糸井重里さん、筆者。野球で遊ぶのは大人も楽しいのだ。
野球に対する“ガチ”と“遊び”。
ダグアウトへ帰るクロウとG党糸井重里さんが久々の再会の握手を交わし、控え室に戻ると『野球で遊ぼう。』恒例の気仙沼の斉吉商店プロデュースの特製弁当で腹ごしらえ。
球場弁当は脂っこいものが多いので、早起きの身体にやさしいあっさり味が嬉しい。東北の辛味だという三升漬けを笹かまに少しつけて食べるとまた美味い。
糸井さんとは「本当の勝負はまだ先ってベンチで笑ってる百戦錬磨の原監督が、もし優勝争いするライバルチームの指揮を執っていたら不気味ですよね。そのスタンスは『CSのつもりで戦う』と8月アタマにムチをいれた若いラミレス監督とは対照的で」「だねぇ、今の61歳の原さんって、藤田元司さんが巨人監督を退任したのと同じ年齢なんだよね」
みたいな会話を交わす。
一緒に放送席に入る川相昌弘さんやスポーツ報知の加藤弘士デスクともご挨拶。よし、いきましょうか。試合開始15分前には放送席へ。
実際に座るとバックネット裏席後方に位置する放送席は確かに見やすい。細かい投球コース等は備え付けのモニターで確認。最低限の選手データは頭に叩き込んでおく必要はあるが、データに頼りすぎてもマニアックすぎる内容になってしまう。
『野球で遊ぼう。』は年に一度や人生初の球場観戦の野球ライトユーザーの方も多い。イメージ的には合コンで知り合ったおネエちゃんとの初デートで野球観戦に来るあの感じ。間違っても、いきなりビヤヌエバのOPSを語っちゃダメだろう。これは書き手も陥りやすい問題だが、好きだからこそ野球に対する“ガチ”と“遊び”のバランスが重要だ。
7点ビハインドに言葉を失う。
試合は初回から燕打線が巨人先発・今村信貴に襲いかかり、バレンティンの3ランに始まり、5回まで毎回得点の猛打でヤクルトが7点の大量リード。
えっなにこれ……家を出て2分後に財布を落としたレベルで言葉を失う放送席。動揺のあまり、震え声で「各球場のビール売り子は、いつか憧れの東京ドームで自分が通用するか試したいと思っているらしいですよ」なんつってなんだかよく分からない売り子情報を口にする俺。
球宴明けの首位独走から一転、三つ巴の混セを象徴するかのような不安定な立ち上がりだ。気持ちを入れ替え、すかさず糸井さんが元プロから見た野球観戦術を川相さんに聞く。
「打者がファールを打った瞬間の野手に注目すると面白いですよ。守備意識の高い選手はしっかりピクッと反応する。でも、中には地面にカカトがついたままの選手もいますから」
なるほど。さすが名手・川相昌弘である。