ぶら野球BACK NUMBER
1日かけてプロ野球を遊び尽くし、
東京ドームと選手の巨大さに驚く。
posted2019/08/17 11:40
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
Yasutaka Nakamizo
誰もいない東京ドームは、こんなにもだだっ広いんだな。
2014年夏、「ほぼ日刊イトイ新聞」と巨人のコラボ観戦イベント『野球で遊ぼう。』に初めて声をかけてもらい、準備のため午前中のグラウンドに立った際、そう思った。
うす暗い無人の内野スタンドで黙々とひとりランニングを続けるのは、DeNA先発予定で当時40歳の三浦大輔。彼は一体これまで何度、試合前の鬼気迫るランニングを経験してきたのだろう。誰にも見られない、どこにも記録されない日々の練習の積み重ね。そりゃあ、その先に待つ試合で結果を出したら、歓喜のガッツポーズをかますのも分かる気がする。
試合終了1時間半後には、駐車場に続く通路をひとりの男が歩いていた。左肘に湿布を貼り、右手にはジャビット人形を2つ持ったガタイのいい兄ちゃん。その試合で完封勝利を挙げた巨人先発の内海哲也である。
球場で何万人という観客を熱狂させても、残業帰りのサラリーマンと同じく、帰り道はひとりだ。これまで数百試合は球場へ行き、数千試合はテレビ観戦してきたのに、初めて知る風景の数々。
これがテレビじゃ見れないプロ野球のリアルか……。早いものであれから5年。三浦は引退しコーチに、内海は西武へ移籍。駆け出しのライターだった自分は何冊かの本を出して、2019年夏の『野球で遊ぼう。』はコラム執筆に加え、ドーム限定FMラジオの放送席に入り、試合の様子を伝えることになった。
ナイターでも、午前10時にドーム入り。
お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。8月9日、ヤキュウの日の巨人対ヤクルトのTOKYOダービー。いわばライター生活において原点のイベントなので、初心に返って、今年は午前10時に東京ドーム入り。
朝まで原稿を……じゃなくてNetflixドラマ『全裸監督』を見ていたので恐ろしく眠いが、どうせならスタッフの一員として準備からがっつり参加したい。関係者入口でスタッフパスを受け取り、まずは荷物を置くなり、ほぼ日チームに混じり通路で球場配布のプログラムを手作業でビニール袋に詰める。やがてガランとした構内の飲食店には大量の食材が搬入されてくる。
普段、なにげなく球場入場時に受け取るチラシやスタジアムグルメひとつひとつも、こうやって誰かが早い時間から準備しているという当たり前の事実に気付かせられる。野球場の舞台は多くの人の手によって成立しているわけだ。