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大阪桐蔭、たった1人の優勝旗返還。
届かなかった甲子園と、最後の意地。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2019/08/17 11:50

大阪桐蔭、たった1人の優勝旗返還。届かなかった甲子園と、最後の意地。<Number Web> photograph by Kyodo News

開会式、大阪桐蔭のキャプテン中野波来は優勝旗を返還するために1人、甲子園の土を踏んだ。

昨年のチームと違うことを受け入れて。

 それでも勝ち上がるごとに、チームとして目に見えて成長していた。破壊力のある2年生の中軸は、競争し合いながら力を発揮し、3年生は主につなぎ役を務めて下級生をもり立てた。投手陣の中では、中田唯斗がエースとして頼もしい軸になっていった。

 苦しんできた3年生の表情の変化も印象的だった。

 新チームがスタートしたばかりの昨秋の大会では、「自信を持てていない」と思いつめていた。春夏連覇を成し遂げ、最強世代と言われた先輩たちのような大阪桐蔭を自分たちも見せなくては、といった重荷を背負いこんでいるように見えた。

 しかし、今夏の大阪大会では、「これが自分たち」と吹っ切れているようだった。

 初戦では、いきなり初回に先制点を奪われたり、3回戦では4点リードを一気に追いつかれたりと、力の差があるであろう相手にも、じりじりするような展開が多かったが、「これが自分たちのペース」と宮本は笑顔で語っていた。

「結構追い詰められる状況はあったんですけど、それが自分たちのペースだと思ってやっているので、あまり焦りはなかったです。接戦や負けている状況が、自分たちの展開。力がないのはわかっていますから。去年のチームは、決勝戦で23点も取るようなチームですから(笑)。自分たちはそんな野球はできないので、接戦を粘ってものにしていきたいなと思います」

大阪桐蔭らしさは継承されていた。

 一方で、大阪桐蔭らしさもしっかりと受け継がれていた。

 準々決勝の金光大阪戦は、1-1のまま延長12回を終え、13回からは無死一、二塁から始まるタイブレークに入った。14回表、大阪桐蔭はこの回の先頭打者がバントを失敗。しかし、続く加藤巧也の打席で西谷監督はエンドランのサインを出し、選手がそれに応えて2-1とリードを奪う。続く6番・中野はスクイズを成功させ、3-1と2点差をつけた。

 前年王者の意地を見た。百戦錬磨の指揮官の勝負勘と、その采配に応える選手の技術と精神力、そして勝利への執念は、「さすが大阪桐蔭」と思わせるものだった。

 しかしその裏、3点を奪われ、大阪桐蔭の夏は終わった。

【次ページ】 「やっぱり大阪桐蔭やな」

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