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フロンターレのリアリスト阿部浩之。
憲剛と同じ目+遠藤っぽい効率性。 

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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photograph byGetty Images

posted2019/08/09 20:00

フロンターレのリアリスト阿部浩之。憲剛と同じ目+遠藤っぽい効率性。<Number Web> photograph by Getty Images

FC東京との多摩川クラシコでは試合を決定づけるゴールを決めた阿部浩之。川崎に欠かせない仕事人である。

田中碧がピッチで感心する戦術眼。

 確かな戦術眼を持ったロマンチストとリアリストが、絶妙なバランスで機能しているのが川崎だという言い方もできるのかもしれない。同じ中盤でプレーするボランチの新星・田中碧も、その違いが良い刺激になっていると話す。

「阿部くんは、憲剛さんとは違うコントロールをしてくれますね。勝負の見極めどころとか、チームがうまく回るためのポジショニングや声がけをしてくれる。例えば、(ボールを奪うため)サイドに行きたいけど、相手が中にいるからその場にステイしようかなと思ったら、阿部くんが中に絞ってきてくれて『行っていいよ』と言ってくれる。このように大事なところで顔を出したり、走ってくれたりするんです。

 技術的な部分があって、なおかつそういうことができる選手なので、見習いたい部分がたくさんありますね。それは、ガンバでたくさんタイトルを取ってきた経験から来ていると思いますし、ああいう選手がいるから、タイトルが取れるようになったのかなと感じています」

「ヤットさん、今ちゃんも……」

 田中の言葉にあるように、阿部浩之のこうした特徴は培ってきたキャリアも大きいだろう。前所属のガンバ大阪では、2014年に国内3冠を主力として達成。彼のサッカー観を聞く機会があったのだが、自身がリアリスト寄りであるのは、その時代の経験値が大きいと本人も振り返っている。

「結局、相手にやられなければいいと思ったのはガンバ時代かな。川崎に来て、より良いサッカーを求めるようにもなったし、内容を良くして勝とうとは思ってやってきたけど、それがずっとできるわけではないから。なんぼ良いサッカーしても、勝たないと意味がないので」

 試合中の阿部は、劣勢や難しい試合展開でも常に冷静だ。落ち着き払ったプレーを続け、チームを勝ちに持っていくために目を光らせ続けている。それでいて、のらりくらりと休むべき時間帯では、効率良くプレーして時計の針を進めていく。そうしたゲームコントロールの振る舞いは、どことなくガンバ大阪の遠藤保仁を感じさせる節がある。

「そうですね。ヤットさんだけではなく、今ちゃん(今野泰幸:ジュビロ磐田)もそうでしたけど、みんな淡々とやるし、そういうメンタリティーがありました。何も動じないというか。そういうのは必要だなと思っていましたね」

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