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フロンターレのリアリスト阿部浩之。
憲剛と同じ目+遠藤っぽい効率性。
posted2019/08/09 20:00
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
Getty Images
「9歳下なんだけど、自分と『同じ目』を持っているからね」
ある日の練習後のこと。
夏場の試合運びやゲームコントロールについて取材していると、中村憲剛がある同僚についてそう評していた。
川崎フロンターレを取材していると、選手たちが「目をそろえる」という表現を口にすることはよくある。もともとは風間八宏前監督が用いていたもので、チームとして戦う上で個々の局面認識を統一させる意味合いで使われていた言葉だ。
だが「同じ目を持っている」という言い回しは、少し聞き慣れないものだった。というよりも、初めて聞くフレーズである。
Jリーグ屈指の戦術眼を持つ中村に、「自分と同じ目を持っている」とまで言わしめたチームメートとは誰なのか。
それは、チームキャプテンの小林悠でもなければ、背番号10を背負う大島僚太でもない。そして昨年のJリーグMVP・家長昭博でもなかった。
中盤の一角を担う阿部浩之である。
ゴールを決めると30戦以上負けなし。
サイドハーフを主戦場とする彼は、ゲームメーカータイプではない。身長は170cmと小柄で、飛び抜けたスピードがあるわけでも、爆発的なキック力を持っているわけでもない。
だがゲームの流れを読む力に長けており、守備でのハードワークも惜しまない。そして何より、試合中に対戦相手が嫌がるツボを熟知している選手だ。
実際、彼はゴールを決めた試合では、30試合以上負けなしという驚くべき無敗記録が継続中だ。それだけ勝負の肝となる局面でゴールを奪うという仕事をしていることでもある。
阿部本人は「性格が悪いんでしょうね」とおどけるが、そういう大局観も含めて、「自分と同じ目を持っている」と中村は評したのである。