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フロンターレのリアリスト阿部浩之。
憲剛と同じ目+遠藤っぽい効率性。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images
posted2019/08/09 20:00
FC東京との多摩川クラシコでは試合を決定づけるゴールを決めた阿部浩之。川崎に欠かせない仕事人である。
憲剛が語る阿部との共通点とは。
「試合中に相手にとって嫌なことをしたいのは自分も同じで、そこが合致しているかな。例えばだけど、マナブ(齋藤学)とかアキ(家長昭博)は相手が嫌なことをやるというよりも、自分の武器を100パーセント出すことで、相手が嫌がるじゃない?
自分や阿部ちゃんはそこまで能力が高くないがゆえに、立ち位置で勝負する。どっちが良い悪いとかじゃなくて、そういう道のりを歩んできただけ。1人で抜いたりとか、フィジカル系ではないけど、逆になんでもできる。守備もできるし、ポジションも取れるし、ランニングもできる。シュートもうまい。小憎たらしいと思いますよ、相手からすると(笑)」
ピッチ上の中村と阿部は、「いま何をすべきなのか」というゲームコントロールにおける見解が一致することが多い。例えば紅白戦でボールが落ち着かない展開が続くと、中盤の選手が保持した瞬間、「止まれ! 行くな!」と2人が同時にコーチングしたほどだったという。
スコアや試合展開、そして時間帯に応じてやるべきことも刻々と変わっていくのがサッカーという競技である。
時に攻めたい選手がいれば、守りたいと思う選手もチームに混在することも珍しくない。そうした瞬間的なズレが、相手に付け入る隙を生む要因にもなる。だから、チーム内に同じ目を持っている選手がいることは貴重なのである。
ロマンの憲剛、リアリストの阿部。
興味深いのは、最終的な目的地は同じでも、そこにたどり着くためのルートが、両者で時折違うこともある点だ。
もともと川崎は攻撃的なサッカーを展開し、その内容を勝利に結びつけることを志向してきたチームである。ただサッカーにおいて、内容と結果は一致しないこともある。そういう展開で、結果に対してうまく舵を切る阿部の試合運びが、チームにとって良い塩梅になっていると中村は話す。
「サッカー的に、自分はけっこうロマンを追い求めるタイプなので。あそこまでリアリスト(現実主義者)にはなれないところがある。だからこそ、大いに助けられている。ベースは一緒だし、考え方も似ているけど、(試合の)割り切り方とかは頼る部分が大きい。全く違うベクトルの2人が中盤にいるので、相手からすれば本当に嫌だと思うよ」