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飽和するマラソン大会の受け皿に!
予算もコースもいらない新しい試み。
 

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金哲彦

金哲彦Tetsuhiko Kin

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posted2019/08/04 08:00

飽和するマラソン大会の受け皿に!予算もコースもいらない新しい試み。<Number Web> photograph by Tetsuhiko Kin

ゴール後は打ち上げを兼ねて参加者による交流会が行われる。大会によっては同じTシャツを着用して走ることで一体感を感じることもできる。

地元の物産屋台が並び、ビールを飲みながら。

 岐阜県本巣市と高知県の例で紹介する。

 本巣市は国の天然記念物「淡墨桜(うすずみざくら)で有名。そんな観光名所と地域住民の健康づくりを兼ねたイベント「早春淡墨桜浪漫ウオーク」を毎年3月に開催している。ウォーキングによる町づくりが市のテーマでもある。年1回のウォーキングイベントに力を注ぐのはもちろんのこと、市内のショッピングセンター内にウォーキングコースを設置するなど工夫を重ねてきた。

 ウォーキングによる町づくりは、住民が日常から積極的に歩き、みんなが健康になることが目的なのだが、年1回のイベントだけでは効果の実感は、これまであまりなかったらしい。

 そんな本巣市の教育長と知り合う機会があり「FREE10 run&gather」のアイデアを伝えたところ、開催を即決してくれた。FREE10のメリットである道路使用許可が不要、予算がかからない、スタッフ人員が少なくて済むという3つの理由が決め手になったのだろう。主催者側の手間が他のどんなイベントよりも低いことに評価を受けたのだと思う。

「本巣FREE10」は、地元を始め名古屋からも170名を超える人が参加した。フィニッシュ会場には地元の物産屋台がいくつか設置され、ビールを飲みながら参加者同士の交流が盛大に行われた。

フルマラソン経験者から主婦層まで。

 高知で開催した「高知FREE10 in Niyodo Blue」は、水質ランキングで日本一をとったこともある仁淀川の河原にあるバーベキュー会場がフィニッシュ地点だった。イベントの主催は高知龍馬マラソンの事務局で、四国各地から50名以上の人たちが集まった。開催趣旨は毎年2月に開催される「高知龍馬マラソン」のプロモーションだったが、蓋を開けてみると、運動さえ普段まったくしない人たちの参加もあったことに驚いた。

「フルマラソンは無理だけど、10km歩いてもいいならなんとか」という声を聞き、イベントの可能性が広がっていることを実感した。

 これからランニングにチャレンジしてみたい主婦層や、すでにフルマラソンを何度も走ったことがあるベテランランナーなど、ライフスタイルがまったく違う人同士の交流は、各々刺激になったと思う。

【次ページ】 「歩く」機会が少ない地方の健康問題。

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金哲彦
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