本継!SPORTS BOOKリレーBACK NUMBER
『疾風になりたい「9秒台」に触れた男の伝言』
「強い」ランナー・伊東浩司の
切実な言葉が響く、私のバイブル。
text by
佐藤多佳子Takako Sato
photograph bySports Graphic Number
posted2019/08/07 07:30
『疾風(かぜ)になりたい「9秒台」に触れた男の伝言』伊東浩司著 月刊陸上競技編集 出版芸術社 1600円+税
高校生スプリンターの物語『一瞬の風になれ』を書くために、陸上競技の本を色々読んだ。名著が数ある中で、私のバイブルは迷いなく本書だ。タイトルが自然に随分と近寄ってしまい、レース展開の一つを借用したりもしている。伊東さんに取材をお願いした時に、大変緊張しながらお詫びとお礼を申し上げた。
伊東浩司の名は、10.00の100m日本記録と共に多くの人の記憶に刻まれている。2017年桐生祥秀が、2019年サニブラウン・ハキームが、9秒台の世界に到達し更新するまで二十年近く、不動の記録だった。伊東選手は、鳥取のトレーニングジムで初動負荷理論を学び、当時は異端とされた、膝を高く上げない独特のすり足走法のパイオニアとなった。