ボクシングPRESSBACK NUMBER
村田諒太を支える「親父と息子」。
居場所はボクシング、逃げ場は……。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTsutomu Takasu
posted2019/07/31 11:30
ロブ・ブラントにリベンジを果たした直後こそ感情を高ぶらせていたが、試合後の取材では落ち着きを取り戻していた。
父の教えが自分にあり、それを息子へ。
過去、現在、未来。
父親、自分、息子。
村田には長男と長女、2人の子供がいる。2人に目いっぱいの愛情を注いでいるが、息子の話がよく出てくるのは「父と自分と息子」を心のどこかで重ねているからなのかもしれない。
Nスペの録画を久しぶりに眺めながら、難解な因数分解がなんとなく分かるような気がしてきた。過去も現在も未来も、区切らなくていい。父の教えが自分にあり、それがまた息子へとつながっていく。
中学に入る前に両親が離婚して、中学では上級生とケンカして陸上部をやめた。荒れそうになった村田少年を救ったのがボクシングだった。彼は番組のインタビューで「そこに居場所ができた」と答えていた。父と一緒に見つけたボクシングジムに通い、練習が終わったら父が迎えに来てくれていた。
「心豊かに育ててもらった分、いつも心のどこかに逃げ場があったというのも大きかったかな」
実感したであろう居場所と逃げ場。
居場所と逃げ場。
ボクシングという居場所。今回、リング上でも彼がシャウトしていた単語だ。南京都高、東洋大学、帝拳ジム。ここに村田の居場所がある。別に「世界チャンピオン」が居場所でなくていい。ボクシングを精いっぱいやれる環境と支えてくれる仲間たちが自分の居場所なのだと、ブラントに敗れて心の底から実感したのではないだろうか。そして父や自分の家族こそが心の逃げ場だと実感したのではないだろうか。
最高の居場所と、最高の逃げ場。
居場所に感謝し、支えてくれる人とともに前へ進み、苦しくなったときは家族に頼ればいい。
声を挙げたくなるくらい不安に押しつぶされそうになる自分がいた。
しかし居場所も逃げ場も、そんな村田諒太を受け止めてくれる。だから弱い自分をさらけ出せる。だから強い自分に向かっていける。