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<王座奪回を語る>
村田諒太
「完敗から265日。僕は勝つべくして勝てた」

posted2019/07/29 07:00

 
<王座奪回を語る>村田諒太「完敗から265日。僕は勝つべくして勝てた」<Number Web> photograph by Shigeyoshi Ohi

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph by

Shigeyoshi Ohi

目を疑う完敗劇から9カ月。圧倒的不利と言われるリマッチでブラントに2回2分34秒TKOの完璧なリベンジを果たした。ほぼ引退を決意しかけた敗戦から、いかにモチベーションを取り戻し、いかに新たなスタイルを作り上げたのか。「闘う哲学者」が265日間の軌跡を改めて振り返った。(Number983号掲載)

 生傷の勲章を土産に、大阪から急いで帰京しなければならなかった。

 ロブ・ブラントとのリマッチを2ラウンドで制して世界王座に返り咲いた翌日、村田諒太はボクシングの熱気が充満する後楽園ホールに足を運んでいた。母校の応援をするために。

 大詰めを迎えた関東大学ボクシングリーグ。6連覇に王手を懸けていた絶対王者の日大が敗れ、追い掛ける東洋大がわずか勝ち点1差で上回って優勝した。学生時代にもコーチ時代にも経験したことのない初めての栄冠を心の底から喜んだ。

 前夜の快事と後輩たちが起こした快挙が、彼のなかで自然と重なった。

「勝ち点1差ということは、部員が誰か一人でも負けていたらこの優勝はなかった。もっと紐解くと、試合に出ているメンバーだけじゃなくて、彼らと一緒に練習をやってきたメンバーが一人欠けてもダメだったということ。彼らを称えるときに“キミたちは凄くいいチームをつくった”“東洋大学というチーム全体の勝利なんだ”と言ってあげたい。

 じゃあ自分に置き換えてみるときに、どうだろう、と。“俺が凄い”じゃないですよね。それはやっぱりチーム帝拳の勝利。自分の持ち場でそれぞれが一生懸命にやって、『居場所』に対して自分がどういうふうに還元できるか、だと僕は思うんです」

 ブラントと対峙したあの荒々しさは消え、達成を得る摂理に納得するように頷く。

 昨年10月に大差の判定負けに終わった相手へのリベンジ劇。己が巻き起こした奇跡と捉えてはいない。チームで刻んできた必然の軌跡だと彼は受け止めていた。

 7月12日、エディオンアリーナ大阪。

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