野球善哉BACK NUMBER
新星扱いに苦しんだ甲子園経験者。
スーパー1年生という表現の危険さ。
posted2019/07/19 07:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
そのフレーズは活躍した1年生すべてに付けられているようだ。
全国高校野球選手権大会の地区大会が熱気を帯びてきたここ数日、活躍した選手たちが見出しを賑わせる。特にそれが1年生だと、たちまち彼らはこう呼ばれる。
“スーパー1年生”。
1年生の中でもスーパーな存在。高いパフォーマンスを見せつけ、入学したばかりの逸材にそんなフレーズが付いて回る。
この夏、1年生の前川右京を4番に抜擢するなど、ベンチに3人の1年生を登録した智弁学園(奈良)の小坂将商監督はこのように語っていた。
「(1年生が注目されるのは)それだけ今いる2、3年生が不甲斐ないっていうことでしょ。前川を4番で抜擢している理由は練習試合で結果を残してきたというのもあるし、将来の4番として期待するのもある」
小坂監督は1年生の起用に関してはポテンシャルに経験値を加えていく意向だと語っているが、指揮官はそれぞれビジョンを持っているものだ。目先の勝敗だけではなく、個人にとってチームにとって何が大事かを念頭に置いて決断している。
“スーパー1年生”は限られた選手のみ。
ただ、気がかりなのは、“1年生”というだけでスター選手に祭り上げられることの危険性だ。いわば、伝える側のメディアがどういう見立てで、“スーパー1年生”と書いているかだ。
高校野球の歴史において2、3年生を凌駕するような1年生が出てくることは少なくない。誰がみてもワクワクする逸材の登場は、競技レベルの高まりを感じさせる喜ばしいものである。
かつて「桑田・清原」のKKコンビ登場には誰もが驚いた。甲子園で145キロを連発し、ホームランを放った中田翔もそうであろう。大谷翔平は高校1年生での甲子園出場はならなかったが、もし1年夏に甲子園に出場していたら、“スーパー1年生”と呼ばれたはずだ。
ただ、本当にそう呼ばれるにふさわしいのは限られた選手だけである。