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清原和博の返信、大切な戦友たちへ。
忘れない13本のホームランとバット。
posted2019/07/12 10:00
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Hirofumi Kamaya
覚醒剤取締法違反で有罪判決を受け、薬物依存症からの復帰を目指している元プロ野球選手・清原和博氏(51)が、かつて甲子園で戦ったライバルたちに感謝のメッセージを綴った。
2016年2月に逮捕され、5月に有罪となった清原氏は都内の真っ暗な部屋に閉じこもっていた。
その時、雑誌『Sports Graphic Number』にPL学園・清原が放った甲子園最多13本塁打を特集する記事が掲載され、その中で、かつて戦った投手たちが、清原から打たれたホームランが自分たちの人生にいかに大きな影響を及ぼしたかについて赤裸々に語っていた。
どん底にいる自分に向けられた戦友たちのメッセージ。それを何度も何度も読んだ清原氏は、ひとり涙し、小さな一歩を踏み出すことができたという。
彼らの証言をまとめた『清原和博への告白~甲子園13本塁打の真実~』は2016年12月に単行本化され、この7月には文庫化されることになった。
そこで今、執行猶予明けまであと1年となった清原氏は、白球とバットのみでつながる戦友たちに、返信することを決意した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
僕が皆さんのメッセージを目にしたのは、2016年の夏でした。
その年の2月に覚醒剤で逮捕され、留置場で取り調べを受けて、保釈されたあとのことでした。
まだ外に出ることすらできず、ずっと部屋にいた僕に知人が雑誌を届けてくれて、その中に皆さんの言葉がありました。ひとりそれを読んで、涙が止まりませんでした。
あの頃、僕は自分が犯した罪の大きさを実感し、自分が野球で積み上げてきたものを全て失ってしまったのだと後悔し、誰に合わせる顔もなく閉じこもっていました。大袈裟と思われるかもしれませんが、皆さんの言葉はそんな僕に生きていく勇気を与えてくれるものでした。
正直、僕は憎まれていると思っていました。甲子園で対戦して、僕がホームランを打ち、皆さんは敗北を味わったわけです。県を代表して、チームのエースとして背負っているものがある投手にとっては、晴れの舞台で打たれたホームランというのは後悔の念がずっと残るものだろうと考えていました。
それなのに、皆さんが僕との対戦を今でも大切に思っていてくれるということに驚き、感動しました。
なぜ、そう思ってもらえるのか、自分ではわかりません。ただ、皆さんと同じなのは、僕も甲子園で打ったホームランの1本、1本を大切に、はっきりと覚えているということです。