野球善哉BACK NUMBER
新星扱いに苦しんだ甲子園経験者。
スーパー1年生という表現の危険さ。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2019/07/19 07:00
酒田南時代、1年生で本塁打を放った美濃一平。彼も「スーパー1年生」という表現に悩み、苦しんだ。
今年も200球以上投げた1年生が。
先日、昨夏準優勝を果たした金足農が秋田県大会の3回戦で敗れた。
“吉田輝星2世”とも呼ばれる1年生投手が、タイブレークまでもつれた延長13回を1人で投げ抜いたそうである。
その球数は200球を優に超えている。これは異常な数字と言えるだろう。入学して間もない1年生が、いや、数カ月前までは中学生だった選手が200球台ものピッチングを課せられているのだ。
彼を“スーパー1年生”と書くだけでは、メディアの役割を果たしているとは言えない。高校生に200球を投げさせている現状をどう捉えるかは、ジャーナリストの役割とも言えるはずだ。
もっとも昨夏、県大会から甲子園の決勝戦の5回まで1人で投げ抜いた吉田の明らかな登板過多を、「金農フィーバー」によってうやむやにしたことが今年の過剰な投球数にもつながっているとも言える。冷静に物事を見ることを怠ってはいけないと改めて思う。
流行語のように「スーパー1年生」が乱立する2019年夏、新星の登場を喜ぶ一方で、報道の危険を感じずにはいられない。