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パ・リーグ「伝説の10・19」と
南海、阪急「身売り」の舞台裏。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byShinchosha
posted2019/07/21 11:30
「10・19」は近鉄が連勝すれば優勝だったが、2試合目で引き分けて2位に終わった。
劇的なクライマックス。
そうした球団売却の裏側を丹念な取材と資料の掘り起こしで解明しながら、舞台は劇的なクライマックスの川崎球場へと進んでいく。
筆者の山室寛之氏は読売新聞社会部出身で、1998年から2001年まで巨人の代表を務めるなど球界の表裏を知る人物だ。
本書を描くきっかけとなったのは、巨人の代表時代にコミッショナー・川島廣守氏と交わした雑談だったという。
川島氏から「九州の読売新聞にダイエーの球団買収の記事が載っているのに、東京の新聞には載っていなかったのはなぜか?」と問われ、実際に調べてみると確かに大阪と西部(九州)本社が1面トップで扱っているのに、東京版にはそんなビッグニュースが掲載されていなかった。
虚々実々の駆け引き。
その謎を解きたい。
そうして2003年に読売ゴルフ社長を退任すると野球史の研究、取材、執筆を始め2013年からいよいよこの1988年の謎の解明に動き出していた。
持ち前の新聞記者魂もあり、当時の「身売りスクープ」の裏側も、この本の読みどころの一つだ。
南海の身売り報道は1988年8月28日に読売新聞(西部)、西日本新聞、報知新聞(現スポーツ報知)の3紙の一面を飾っている。
その後は他社も含めた取材合戦が繰り広げられるが、ダイエーサイドも南海サイドもなかなか事実を認めず、虚々実々の駆け引きが繰り広げられた。最終的には9月9日に「10月1日にオーナー会議招集」という通知が出されていたことが、12日になって分かり「ダイエーの南海買収決定」のニュースとなっていく。
その中で買収条件をスクープしたのが、当時の読売新聞だった。