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インテル、ミラン復権を託された
コンテとジャンパオロの“頭”の差。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byUniphoto Press
posted2019/07/18 08:00
インテルの監督に就任したコンテ。ミランと共にユベントスの絶対王朝を崩せるか。
インテルを引き締め直すために。
そんな彼をインテルの立て直しに呼ぼうとしたのは、ユベントスでも一緒に仕事をしたジュゼッペ・マロッタCEOだった。
「私のアイディアで、他の幹部の承認を得た。コンテ監督は一番の選択肢だった。前任の指導者の業績を悪く言うつもりは毛頭ないが、彼のような人物が必要だと思った」
ようは、彼の強力な指導力でチームを引き締め直して欲しいと願ったということだ。
インテルは、世界の津々浦々から強力な選手を集めてチームを形成することを1つのアイデンティティとしている。
ただその反面、文化の異なる選手たちが集団となるには難しい面もあり、シーズン中盤には何かしらの不協和音が噴出するのがお家芸となっていた。
昨シーズンは主将のマウロ・イカルディの契約更新をめぐり、その夫人で代理人を務めるタレントのワンダ・ナラが、メディアを使って他の選手との確執にまで言及。ロッカールームのコントロールがしづらくなり、後半戦失速の大きな要因となっていた。
そうした問題をなくし、より上の目標を望むためのコンテ就任である。
スイスのルガーノで行われた合宿は、基本的に非公開。厳しい指導で、規律のあるチームへと仕上げようとしている。14日に行われたルガーノとの練習試合では、ユベントス時代のような3バックでの攻撃的でアグレッシブなサッカーを披露していた。
前線の選手が激しく走ってボールを追い回し、高い位置でボールを奪取。パスセンスのあるCBステファン・デフライが後方から展開し、ウイングバックにコンバートされたクロアチア代表MFイバン・ペリシッチが疾走するという形に作り変えていた。
ジャンパオロは「胸を張って」。
「頭を下げて練習に集中すること」を説いたコンテ監督に返答するかのように、ジャンパオロは翌日に行われたミラン監督就任記者会見で「頭を上げて(a testa alta)」と説いた。
これは恥じることがなく、落ち着いており、正々堂々としている様を示す慣用句で、日本語で言うところの「胸を張る」のニュアンスに近い。恥ずかしい思いをしながらすごすごと去り行く姿を形容する「頭を下げて」の、対義語としても使われる。
つまりリアクションに徹するのではなく、堂々と仕掛けるサッカーを展開したいという意思の表れ。そしてそれこそが、ミランの特徴であるべきなのだとジャンパオロは考えている。