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インテル、ミラン復権を託された
コンテとジャンパオロの“頭”の差。
posted2019/07/18 08:00
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph by
Uniphoto Press
「“頭を下げて”懸命にペダルを踏むこと。これが我々のモットーだ。目標に向かって貪欲なまでに集中し、安定性を築いて持続させていかなければならない。新シーズンの主役になりたければ、このようなキャラクターであることが必要なのだ」
「我々の哲学は“頭を上げて”サッカーをすること。主力もリザーブもなく、選手たちにはミランで新たな歴史の1ページを描くんだという意欲を持って欲しい。見合う結果をあげながら、賞賛していただけるサッカーを提供することが我々の計画なのだ」
7月、インテルとミランの新監督がそれぞれ就任記者会見で抱負を語った。
前者はインテルのアントニオ・コンテ、後者はミランのマルコ・ジャンパオロの発言であるが、そこには対照的なスタンスの違いが現れていた。一方は“頭を下げて”、もう一方は“頭を上げる”。それぞれ頭という言葉を使いながら、各々のチームの立て直しについて、違ったアプローチを示唆していたのだ。
イタリア語で「頭」のことを「テスタ(Testa)」と言うが、これは様々な意味に使われる。脳が内包する身体の中枢機関であること、物事の始まりや頭脳の明晰さを指す表現であることはもちろん、パーソナリティーやプライド、そして物事に取り組む姿勢を表す言葉としても慣用的に用いられる。
コンテが求める「猪突猛進」。
まずは、コンテ監督が7月7日の就任会見で口にした「頭を下げる(a testa bassa)」。これは牛などのツノのある動物が突進していく様子から、頭を低くし脇目も振らずひたすら目標に突き進む様子を指す。ニュアンスとしては、日本語の「猪突猛進」に近いと思っていただければいいだろう。
ユベントス監督時代には3連覇を達成し、また「史上最弱」と言われた戦力を用いてEURO2016でもイタリア代表を準々決勝まで導いたコンテ監督。彼はずっと、この「頭を下げてペダルを踏む」ということをモットーにしてきた。
厳しい指導で選手に集中を要求し、試合では前線からの激しいプレスをベースに、勝利のために90分間アグレッシブに走るサッカーを課してきた。このように猛烈なハードワークを課すサッカーを、強いリーダーシップで実現させるのがコンテの強みである。