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インテル、ミラン復権を託された
コンテとジャンパオロの“頭”の差。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byUniphoto Press
posted2019/07/18 08:00
インテルの監督に就任したコンテ。ミランと共にユベントスの絶対王朝を崩せるか。
ミランは最先端でなければならない。
「ミランには、サッカー上で識別できる特徴がある。それは内容のあるサッカーをしながら、目標に到達するということだ。ビッグクラブにはそれぞれアイデンティティがなければならない」
ミランの元選手たちも、関係者も、そしてファンも、ミランはただ強いだけではなく攻撃的で美しいサッカーをしてきたチームであるという自負を抱いていた。
バルセロナやスペイン代表がいわゆる“ティキ・タカ”で世界を席巻するまでは、それこそ自分たちが最先端にいてサッカーシーンを塗り替えてきたというプライドがあった。
ただ強力な選手を集めるだけではなく、アリゴ・サッキ監督がゾーンプレスを導入した時のように、攻撃的な戦術のもとで相手を常に支配するサッカー。チャンピオンズリーグなどタイトルのかかった試合では堅守からのカウンターに徹していたことも多かったが、基本的には攻撃的に相手を支配していくチームだという誇りを持っている。
マルディーニ、ボバンが後方支援。
シルビオ・ベルルスコーニ前会長からチームを買収した中国系資本家グループは、闇雲な補強を図った。その結果、経営状態に問題のあったクラブの収支はさらに悪化。その影響は米国金融資本を主体とした新経営陣に実権が移っても、続くこととなる。
各クラブの財政健全化を図る欧州サッカー連盟(UEFA)からの処分でヨーロッパリーグ出場権を失い、収支バランス健全化のため強大な選手の補強もはばかられる状態になっている。
そんな中でクラブが望むのは、攻撃的な組織サッカーを展開するというミランのアイデンティティを取り戻すことだ。パオロ・マルディーニやズボニミール・ボバンといった元名選手を経営陣に招き入れて、改めてコンセプトを確認。それを実現するに最適な指導者として、ジャンパオロに白羽の矢を立てたというわけだ。
サンプドリアの3年間で好成績を挙げ、ミランに引き抜かれたジャンパオロ監督は51歳。アリゴ・サッキに学び、非常に組織的で、ショートパスを主体とする攻撃的なサッカーを展開できる指導者として、イタリアサッカー界では長く注目されてきた人物だ。