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安部裕葵をバルサへ導いた成長欲。
「挑戦する回数が人生では大事」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2019/07/12 19:15
鹿島アントラーズからバルセロナへ。安部裕葵の大挑戦が始まろうとしている。
成長できる環境なら高望みするべき。
バルセロナからオファーが来たら、選手ならば喜んで当然だ。悩んだり、躊躇する必要はないだろう。だとすれば「なぜ、バルサへ?」と聞くのも、また愚問なのかもしれない。
「新しい環境で自分の力を出しにいくだけでなく、成長するために行く、というのを常に考えています。誰かとの勝ち負けや競争ではなくて。もちろん、試合に出られればそれはそれ。ただ、それ以外の時間は自分自身の成長を求めたい。結局、それができない人は競争には勝てないですから。
まして、僕は20歳です。試合に出られる身の丈にあったクラブへ行ったほうがいいなんて思わない。そういう気持ちだったら、鹿島にも来なかったはず。もちろん、海外へ行けば必ず成長できるという保証もないですよ。
でも学校の勉強と一緒じゃないですか? 年齢が上がるごとに知らないことをどんどん学んで、テストしての繰り返し。サッカーも同じです。知らないものを学べるか、自分の経験していないものを素直に採り入れられるか、どこまで行けるかだと思います。
僕は鹿島に入って成長して、海外挑戦できることになった。成長することで自分だけでなく、親や周りの人も喜ばせられる。結果を出すには、運やタイミングなどいろんなことが影響してくる。でも、成長に関しては自分自身なので。成長できる環境なら高望みするべきだと思います。勇気というか、たぶん向上心、好奇心が僕には生まれつきあるので、自然とこういう選択ができた」
ただただ成長するために行くので。
安部は将来から逆算するというよりも、足元を見ながら歩いているタイプだ。だからこそ、「日々、毎日を過ごす環境」が一層大事になるはずだ。
学びがあふれる場所を彼は選んできたし、そういうクラブに選ばれた。バルセロナ入りの切符を手にした今も、キラキラと輝く未来を描いているわけではない。
「いや、何も考えてないですよ。ただただ成長するために行くので。それはサッカーを含めて……人として。もしサッカーを辞めた方が成長できるんじゃないかと思えばそういう選択をしますけど、しばらくそういう考えにはならないと思います。
もし、Jリーグに戻った方が成長できるんじゃないか、と思えばJリーグに戻りますし、海外でずっと長くいた方がいいんじゃないかと思えば、もちろんそうします。そして今は海外で長くプレーした方が成長につながると考えています」