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“自己主張しないFW”フィルミーノは、
セレソン、リバプールを勝たせる男。 

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寺沢薫

寺沢薫Kaoru Terasawa

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photograph byGetty Images

posted2019/07/09 08:00

“自己主張しないFW”フィルミーノは、セレソン、リバプールを勝たせる男。<Number Web> photograph by Getty Images

リバプールでのCL制覇に続き、コパ・アメリカでも優勝。フィルミーノはチームを勝たせるセンターフォワードだ。

中盤まで引いたり“首振り”も。

 時には中盤まで引いてきて、時にはワイドに開いて相手のDFをおびき寄せる。その空いたスペースにリバプールならサディオ・マネやモハメド・サラーを、ブラジル代表ならガブリエル・ジェズスやフィリペ・コウチーニョ、コパ・アメリカ得点王に輝いたエベルトンらを走らせて、ビッグチャンスを創出する。

 特にサラーとマネがリバプールでゴールを量産できているのは、フィルミーノの“隠れたお膳立て”によるところが大きい。

 昨シーズン、フィルミーノはある試合で相手との接触で目を負傷してしまったことがあった。

 そのケガからの復帰戦となったCLパリ・サンジェルマン戦でいきなりゴールを決めたのだが、試合後にマネが「ロベルトはたとえ目が見えなくても、なんでもお見通しのスーパーな男なんだ」と言ったことがあった。

 それはジョークだったが、「見えなくてもお見通し」という表現は言い得て妙だったりもする。彼はまるで360度がすべて見渡せているかのように、効率的かつクレバーな動きで仲間にチャンスを提供する。

 実際はよく見ると、絶えず“首振り”をしていることがわかり、常に周囲を見て、考えてプレーをしているのだが、いわゆる「偽9番」としての働きはそれくらい秀逸だ。

アルゼンチン戦で見せたセンス。

 コパ・アメリカ準決勝、2-0で勝ったアルゼンチン戦もそうだった。19分にブラジルが先制ゴールを決めた場面で、右サイドバックのダニエウ・アウベスがやや中央寄りでボールを持った際に、フィルミーノはまずスーッと引いてボールを受けにきた。

 いったんパスがコウチーニョに渡り、彼の中央突破が相手に潰されたが、こぼれ球を再びアウベスが拾うと、今度はすかさず右に開いて彼のドリブルコースを空けた。

 そして右でパスを受けると鋭い折り返しを中へと送り、右ウイングの位置から入れ替わりで中央にスライドしたジェズスがゴールをゲット。ゴールまでの過程で、フィルミーノのポジショニングセンスが存分に生かされた。

【次ページ】 昔はDF、ボランチをやっていた。

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