ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
“自己主張しないFW”フィルミーノは、
セレソン、リバプールを勝たせる男。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/07/09 08:00
リバプールでのCL制覇に続き、コパ・アメリカでも優勝。フィルミーノはチームを勝たせるセンターフォワードだ。
昔はDF、ボランチをやっていた。
フィルミーノがこんなにも異質なストライカーになった背景には、紆余曲折のキャリアがあるのかもしれない。
彼は生まれ故郷であるブラジルのアラゴアス州にあるクルーベ・ジ・レガタス・ブラジルというクラブ(かつてカズも在籍したチームだ)の下部組織でプレーしていた頃は、サイドバックやセンターバックをやっていたという。
その後、(当時は代理人などいなかったため)担当の歯科医だったマルセルス・ポルテッラという友人の助けを借りてフィゲイレンセに移籍すると、そこでも最初は守備的MFを務め、10代も終わりに差し掛かる頃に、ようやくアタッカーへと転向したという。守備能力の高さは、そうした経験が生きている。
その後、ヨーロッパの流儀を学んだドイツのホッフェンハイムでは、主にトップ下でプレーした。
今も大きな武器となっている視野の広さは、MFとしてのプレーで育んだものだろう。その後、リバプールに加入したときも最初はストライカーではなく攻撃的MFとみなされていたのだが、クロップ監督の発案で彼は“9番”としてプレーする機会を与えられた。
普段は自己顕示欲があるんだけど。
当時チームにはダニエル・スタリッジ、クリスティアン・ベンテケといった正統派のセンターフォワードがいたが、クロップはゲーゲンプレッシングを具現化するにはフィルミーノが適任だと判断したのだ。その起用が当たったことで、以降の彼はクラブでも、ブラジル代表でもストライカーとしてプレーするようになったのだった。
普段は真っ赤なフェラーリを乗りこなしたり、キラッキラのスニーカーを履いてみたり、耳にはダイヤのピアスを光らせたり、ちょっとエキセントリックな洋服を着てみたりと、根っからの派手好きで、個性を全面に出すタイプだ。
最近は減ってきたが、ゴールを決めたら興奮のあまりユニフォームを脱いでイエローカードをもらうこともしばしばで、そうした様子からは少なからず自己顕示欲が感じられるし、主張の強い目立ちたがり屋の側面は、間違いなくある。