ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
“自己主張しないFW”フィルミーノは、
セレソン、リバプールを勝たせる男。
posted2019/07/09 08:00
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph by
Getty Images
チャンピオンズリーグと、コパ・アメリカを制したチームのセンターフォワードである。だから彼が、いま世界最高のストライカーの1人であるということに異論の余地はないはずだ。
しかしおそらく、謙虚なこの男は「俺様こそ最高」と驕りを見せたり、「俺が俺が」というプレーでゴールを独り占めしようとしたりだとか、そんなことはしないだろう。自分のスタイルを変えることも、決してないはずだ。
そう、攻撃を最前線からリードするセンターフォワードでありながら守備に奔走し、同時にチームの潤滑油となって仲間たちを助ける“黒子”でもあるという自身のスタイルを。
「ロベルト・フィルミーノは、ハードワークしてピッチでチームメイトをサポートする選手だね。しっかりと心構えができていて、チームの中で戦術的な役割を担う方法を知っているんだ」
これはフィルミーノが、2015年夏にホッフェンハイムからリバプールへと移籍して、最初に受けたクラブオフィシャルのインタビューで自己紹介を頼まれた際に述べたコメントだ。
よく走り、よく戦うハードワーカー。
その言葉に嘘偽りはなく、彼はピッチで誰よりもハードワークを見せ、よく走り、よく戦う。別のインタビューではこうも言っていた。
「ドイツで多くを学んだから、走るのは僕にとって簡単なんだ。自動ボタンみたいに、一度ボタンを押されたら走り続け、ハードワークし続けられるんだ」
「ピッチでは半分ブラジル人、半分ドイツ人って考えてプレーしていたよ」
柔らかなボールタッチや思わず見惚れてしまうようなテクニック、ブラジル人らしい遊び心は忘れずに、その上で、ヨーロッパ・スタイルの“戦うサッカー”に適応した。
よりパワフルでスピーディーなプレミアリーグで4シーズンを戦い抜いた今は、おそらく「半分ブラジル人、半分イングランド人」の気持ちになっていることだろう。