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“自己主張しないFW”フィルミーノは、
セレソン、リバプールを勝たせる男。 

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寺沢薫

寺沢薫Kaoru Terasawa

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photograph byGetty Images

posted2019/07/09 08:00

“自己主張しないFW”フィルミーノは、セレソン、リバプールを勝たせる男。<Number Web> photograph by Getty Images

リバプールでのCL制覇に続き、コパ・アメリカでも優勝。フィルミーノはチームを勝たせるセンターフォワードだ。

誰よりもタックルを成功させるFW。

 攻撃を本分としつつ、常に守備にも気を配れる選手だ。リバプールに移籍した2015-16シーズンから現在までの期間で、プレミアリーグにおけるFW登録の選手で、彼よりも多くタックルを成功させた選手はいない(219回)。

 今回のコパ・アメリカでも、5-0で勝利したグループリーグのペルー戦で、相手GKに猛然と詰めていってキックをカットし、ゴールを決めた場面があった。

 そのペルーと再戦した決勝でも、ブラジルの2点目は彼のタックルから生まれた。一度は奪われたボールを“1人ゲーゲンプレス”で綺麗に奪い返し、それをアルトゥールが拾って、ガブリエル・ジェズスにラストパスを通した。

 ボールを奪うだけでなく、ファーストDFとして相手のビルドアップを阻害する“コース切り”のプレスも絶妙だ。ポジション取り、距離の取り方、間合いの詰め方、すべてを心得た上で、ハードなプレッシングに奔走する。

 こういうFWがいると、後ろから攻撃を組み立てたい現代のGKやDFは非常に困る。仲間と連動しながらボールをサイドに誘導して囲んでボールを奪う、または長いボールを蹴らせて仲間にセカンドボールを拾わせれば、フィルミーノの勝ちだ。

クロップも称える献身性と異能。

 ユルゲン・クロップ監督は、たとえ得点がなかった試合でも、「彼はキックオフから92分後だろうと、60~70ヤード以上の距離をスプリントするんだ。信じられないだろう?」とフィルミーノの献身を称える。

 異能のストライカーっぷりは、こうした守備の局面にとどまらない。

 もちろんゴールを奪う術にも優れているし、アシスト数も多いのだが、それ以上に際立つのが数字に表れない部分、スペースメークや、味方を生かすプレーの巧みさだ。

 自らの動きによって相手のディフェンスラインに“ズレ”を生じさせ、仲間にプレースペースを提供することにかけて、おそらく現代サッカーにおいて彼の右に出る者はいない。

【次ページ】 中盤まで引いたり“首振り”も。

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