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相撲は本当に体重が重い方が有利?
番付が上がるほど小さくなる影響度。
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKyodo News
posted2019/07/10 08:00
白鵬と比べても、かなり小さく見える炎鵬は99キロ。巨漢と戦う方法論を持ち合わせた小兵はいつの時代も人気だ。
幕内では、体重差で勝敗は決まらない。
もう1つ別の角度で見てみよう。
体重の重い力士と軽い力士が戦った時、果たしてどちらが有利なのだろうか。恐らく多くの方が、当然重い力士が有利だと考えるだろう。ボクシングや柔道が体重別にしていることを見ても、体重が重いことは基本的に強さだからだ。
数字で見てみるとこの予想は正しいのだが、ある意味で裏切られる結果であった。
2011年以降の全ての取組で平均すると、勝者の体重は敗者の体重の104.3%だった。つまり、勝者の方が敗者よりも若干重いということだ。しかも上位になればなるほど、この値はほぼ100%に近くなる。
序ノ口は110.0%、序二段は106.2%、三段目は103.9%、幕下は102.5%、十両は102.6%、そして幕内に至っては101.3%だ。記録の観点で考えると、上位に上がれば上がるほど実力が拮抗し、体重が重い方が勝ちやすいと言えなくなるのが今の大相撲の特徴なのである。
横綱大関に目を向けても、白鵬、鶴竜、豪栄道の体重は幕内全体の平均以下だ。そして貴景勝、栃ノ心も平均付近である。勝率が高い力士の中で平均体重を10キロ以上上回っているのは高安と逸ノ城、御嶽海くらいというのが実情だ。このことからも、上位で取るには体重はある程度必要ではあるのだが、スタイルに見合った形で増やし過ぎない程度に保つことが重要であることが分かるだろう。
体重1.5倍を超えると、勝率は大きく上がる。
なお体重比別の勝率も算出したところ、面白いことが分かった。
体重が重い力士が軽い力士よりも勝率が高いのは同じなのだが、勝利数を比較したとき、体重が1.1倍~1.5倍程度までの重い側の勝率は52%程度に留まる。しかし、これが1.5倍~1.7倍になるとその勝率は55%まで到達するの興味深いところだ。
というのも先ほどのデータで振り返ると、現在幕内で軽量の部類に入るのは140キロ台からという話をしたが、彼らにとって若干不利になるラインである1.5倍の体重、すなわち210キロを超える力士は逸ノ城しかいないということである。
これが130キロ台になると数名存在する190キロ台でも若干不利になるので、140キロ以上の数字面でのハンディの無い力士達が覇権を争っているということを意味しているのである。