大相撲PRESSBACK NUMBER
相撲は本当に体重が重い方が有利?
番付が上がるほど小さくなる影響度。
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKyodo News
posted2019/07/10 08:00
白鵬と比べても、かなり小さく見える炎鵬は99キロ。巨漢と戦う方法論を持ち合わせた小兵はいつの時代も人気だ。
体重増は一部力士ではなく全体の傾向。
ただ、イメージと異なる結果だったことが1つある。
平均体重は増えているが、飛び抜けた巨漢力士は幕内に多くないのである。
幕内の力士のボリュームゾーンは、140~180キロの間だ。この間に実に33名、78パーセントの力士がひしめいている。151キロから160キロが10名、161キロから170キロが8名、171キロから180キロが11名という内訳だ。
巨漢力士と言えるのは、200キロを上回る逸ノ城と魁聖、190キロ台の碧山、千代大龍、千代丸の5名ほどだろうか。極端に大きな力士が平均体重を押し上げているのではなく、全体的に体重が増えていることが平均を引き上げていることになる。
速さと圧力を両立するのが140~180キロ?
これが十両になると状況が変わる。力士の体重がばらけるのだ。120キロ以下が1名、130キロ以下が4名、140キロ以下が3名、150キロ以下が4名、160キロ以下が3名、170キロ以下が2名、180キロ以下が4名、190キロ以下が3名、200キロ以下が2名、といった具合である。
十両は、体格同様に相撲もかなり多様だ。軽量には軽量の、巨漢には巨漢のスタイルがあって、攻防を観ていて非常に楽しい。それぞれが持ち味を発揮するので、コンディションが良い者が勝つことになるのだ。
近年の幕内の相撲の特徴は「速さ」と「圧力」である。2018年は、すべての番付の決まり手で、史上初めて押し出しが寄り切りを上回ったということを以前紹介したが、とりわけ幕内ではその傾向が顕著だ。
速く圧力を伝える相撲を取るには、それなりの体重が必要だ。だが、体重が有りすぎると速さで劣ることになる。前述の傾向を当てはめると、この速さと強さを両立させられる体重というのは140~180キロということなのだ。つまり、200キロ近い体重で圧力勝負を挑む千代大龍は、2019年の大相撲の中で異端の力士なのである。