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相撲は本当に体重が重い方が有利?
番付が上がるほど小さくなる影響度。
posted2019/07/10 08:00
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph by
Kyodo News
国技館で最も歓声が上がるシチュエーションの1つとして、巨漢力士と小兵力士の対戦がある。
立合いから小兵力士のスピードが上回り巨漢力士がどう立ち向かうかという展開になりがちなので、主導権は小兵力士が握ることになる。小兵力士が勝っても負けても持ち味を発揮し、巨漢力士を翻弄するのは大相撲ならではの光景だ。
幕内で結果を残す小兵力士の人気が出るのは自然なことで、場内での「敢闘力士アンケート」は彼らが勝利すれば上位にランクインしやすい。対戦前に会場の雰囲気が逆風になる分、巨漢力士は気の毒ではあるのだが……。
さて最近の大相撲では、以前と比べて軽量の力士が幕内で活躍することが多い。白鵬の内弟子の炎鵬や伊勢ケ濱部屋の新星・照強、今場所は十両だが語学留学中にハリウッド映画のスカウトを受けたこともある石浦など、非常に多彩だ。
十両にも兄弟力士の若隆景やモンゴル出身の霧馬山、脱サラして角界入りした一山本といった力士が控えている。彼らの活躍が目立つのは、大相撲の魅力を分かりやすく伝えるという意味で非常に良いことではないかと思う。
そんなわけで、今回は力士と体重、そして体重による優位性というテーマで見ていこう。
平均は164キロで今も増加中。
2018年初場所時点での幕内力士の平均体重は、164キロである。幕内力士の平均体重がこの50年で30キロ増加しているというデータがあるが、この増加傾向はまだ続いている。
99キロの炎鵬、116キロの照強よりも少し体重のある力士に目を向けてみても、140キロ以下は琴恵光と松鳳山だけだ。150キロ以下は佐田の海、阿炎、明生、嘉風の4人。つまり幕内で見れば、140キロ台ですら軽量と表現されるのが2019年の大相撲である。
ちなみに大相撲の軽量がどれだけ異質か分かる比較として、プロ野球のソフトバンクホークスに所属し、巨漢の大砲としてその名を馳せたイ・デホですら130キロだった。言い換えると、130キロ台の琴恵光に野球のユニフォームを着せれば、野球界では規格外の巨漢だということである。