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名波浩が愛する磐田に残したもの。
「これからも応援をよろしく頼む」
text by
望月文夫Fumio Mochizuki
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/07/04 11:50
川崎戦後に辞任を表明した名波浩。昨季から続く不振を脱することはできなかった。
昨年は何とかJ1残留を果たすも……。
しかし、'18年は再び厳しい状況を迎えた。最大の要因は、想定を超えた主力組のけが人続出だ。MF中村を始め、FWアダイウトン、MFムサエフ、DF新里亮らが次々と長期で戦列を離れた。長期だけでなく、短期の離脱者も続出するなど、整わない戦力で厳しい戦いを余儀なくされた。結局、J1参入プレーオフで東京ヴェルディを破り、辛うじて残留を決めたが、結果が出ないチームには厳しい声も届く。レジェンド指揮官にも、その声は届いていた。
そして残留を決めた昨年のプレーオフ後、名波監督はクラブに辞任を申し出た。クラブ側の説得で続投とはなったが、今季も悪い流れは止められなかった。「主力組の復帰が補強だ」とし、大型補強がなかったことも要因だが、期待された復帰組も思うようにはフィットせず、噛み合わない攻撃を露呈していくことになった。
思うように結果を残せない中で、選手たちとの心のすれ違いも生じるなど、負のスパイラルに突入し、折り返し点の川崎戦の完敗が最後の指揮となった。
「この1年間、選手たちに気持ち良くサッカーをさせてやれなかった。そのけじめをつけたい。成績を残せなかった自分の力のなさを痛感した」。
敗戦の将の反省の言葉が続いた。
名波の功績を後任・鈴木監督は「引き継ぎたい」
しかし、思うような結果が出せなかった指揮官にも自負がある。
「チームマネージメントには自信がある。(選手やスタッフとの)コミュニケーションのところも」
その自信の部分は、周囲の評価も間違いなく高い。そして辞任を表明した会見の最後を、こんな言葉で締めた。
「サッカー人生はまだ続く。(監督などをどこかで)まだやるので」
磐田での足掛け6年の監督業で、確かに結果は出せなかった。それでも、磐田のヘッドコーチから次期指揮官に就任した鈴木秀人監督は、「コミュニケーションの部分は(前監督を)引き継ぎたい」と言い切った。
育った磐田にコミュニケーションの必要性を定着させた名波監督。磐田での反省を生かして勝利を導ける監督となり、得意のマネージメントとの融合で、次に指揮を執るクラブを最強に導く可能性もある。そんな日がそう遠くないかもしれない。