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【NSBC第3期 スペシャルトーク】
太田雄貴×島田社長、特別対談前編。
成功するスポーツ組織の共通項って? 

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

PROFILE

photograph byKiichi Matsumoto

posted2019/06/14 08:00

【NSBC第3期 スペシャルトーク】太田雄貴×島田社長、特別対談前編。成功するスポーツ組織の共通項って?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

特別対談で大いに語り合った日本フェンシング協会・太田雄貴会長(左)とBリーグ千葉ジェッツの島田慎二社長。

企業にスポンサードを募る方法論。

島田 私は異業種からスポーツの世界に入った人間ですから、スポーツクラブの経営も普通のビジネスだと捉えています。ですから、お客様に満足、納得していただけなければお金は集まらないという考えです。スポンサードしてくれる企業もお客様です。対企業であれば、社長に首を縦に振ってもらわなければなりません。

 そこで、スポーツに投資する判断をいただくため様々な方法を考えました。まずは相手方のニーズを聞くところからです。というのも、企業の経費は我々のスポンサーに転換できると考えているからです。

 たとえば、広告宣伝費に年間4000万かけている企業が採用に苦しんでいる、とします。そこで4000万のうち3000万を自社で策を講じていただき、残りの1000万をうちにスポンサー費としていただく。その結果が同じであれば、企業にとっては、ジェッツのスポンサードをすることで「地域スポーツを支えている」というポジティブなインパクトを与えることができる。これは付加価値ですよね。

 予算以上の経費を出す判断は難しいものですが、予算化された中で経費の使い道をジャッジメントするのはハードルが下がる。そういった意味で企業のニーズや課題を徹底的にリサーチし、千葉ジェッツとしてどんな貢献ができるかをプレゼンしていますね。

太田 ホームページを拝見すると、スポンサーの数が本当に多いことに驚かされます。営業の担当者は、何名ほどでしょうか。

島田 5人です。

太田 日本フェンシング協会も、そのくらいの営業人員で力を入れていけば、それなりにスポンサーさんからもお金が集まると思うんですよ。ただ、私たちのような公益法人は公益事業と法人事業に分かれていて、株式会社のように稼ぐことが本義とはいえない状況です。

フェンシングをプロ化できるか。

島田 別法人を立ち上げることは難しいのですか?

太田 可能です。ただ、その場合は33%までしか協会が株式を持てません。したがって、残りの株主をどうするか、という問題が出てくるのです。

島田 フェンシングのプロ化については、どのようにお考えですか。

太田 日本のスポーツ界には既存のプロ野球、Jリーグに続き、Bリーグ、そして卓球のTリーグが開幕しました。様々な競技団体で「プロ化したい」という思いがありますが、フェンシングは現段階ではプロ化は考えていません。

 オリンピック競技ですから現段階でプロ化するのは事実上難しい、という側面もありますが、むしろアマチュアスポーツでありながらも、社会とさまざまな形で接点を持っていくような、アマチュアとプロの特徴を併せ持ったものを目指したいと思っています。今は国からの補助金や助成金に依存することのない協会運営を目指し、その次のステップとして、ベストの経営戦略を議論しているところです。

島田 そうですね。私もその方針に賛同します。プロ化してすべての人がハッピーかといえば必ずしもそうではありません。プロ化するということは、ファンや地域と共存共栄していかなければなりません。

 しかしながら時代背景や少子化など、行政の財政力も脆弱になる中で、どの競技もプロ化してしまうと、地域で支えられなくなってしまいます。競技それぞれの特徴にあった生き残り方を模索し、その競技が設定するゴールに向かっていけばいいと考えています。

【次ページ】 昇・降格のない時代がやってくる?

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