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【NSBC第3期 スペシャルトーク】
太田雄貴×島田社長、特別対談前編。
成功するスポーツ組織の共通項って? 

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

PROFILE

photograph byKiichi Matsumoto

posted2019/06/14 08:00

【NSBC第3期 スペシャルトーク】太田雄貴×島田社長、特別対談前編。成功するスポーツ組織の共通項って?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

特別対談で大いに語り合った日本フェンシング協会・太田雄貴会長(左)とBリーグ千葉ジェッツの島田慎二社長。

「魅せられる」レベルを求めて。

太田 正直なところ、まだフェンシングは、ジェッツさんのハーフタイムショーのプログラムとしてふさわしい、「魅せられる」レベルにはない、と思っています。今はまだ試行錯誤しているところです。

 既存の3種目(エペ、フルーレ、サーブル)は剣がどうしても細く、遠目からだと何をやっているかまったく分からない。それをそのまま観客に見せつけて「すごいだろう」というのは、正直我々のエゴになってしまいます。一般のお客さんが競技を見ていて、笑ったり感動したり、「すごい」と感じるようなものを、わかりやすく見せられる形を作ってからご一緒できたらいい、とは思うのですが。

島田 なるほど……。実はジェッツも私が代表に就任した当初は業界でも集客力は下位で、数百人しか入っていない時代もありました。その頃、集客努力は全くしていませんでした。なぜなら、集客をしてもお客様が「つまらない」と感じれば、二度と会場に来なくなると考えたからです。

 地域密着・地場産業としては敵を作ったら終わりです。当時は(お客様を)呼べば呼ぶほど、未来に向けてのアンチを増やすだけだと思い、クラブの価値が上がるまでは積極的には呼ばないと決めていました。その後、先日1億円契約を結んだ富樫(勇樹)を獲得したタイミングで、フロントの人員も増やし一気に攻勢をかけたんです。

分かりやすく楽しめる演出を。

太田 まだ攻勢をかける時期ではない、というのは似ていますね。実は6月に千葉ポートアリーナでアジア選手権を開催しますが、今回はあまり積極的にPRしていません。なぜなら、今回は昨年の全日本のような演出を行うことができないため、初めて来場したお客様を必ず満足させるという自信が少ないからです。ただ、オリンピックの出場をかけた試合ですので、関係者の人にはたまらない試合になると思います。

 私自身は少しでも満足して頂くために写真を撮ったりなどして……満足度を違うところですり替えに行く作戦です(笑)。でも、オリンピックではこうならないので、見に来てくださいねと伝えるのも忘れずに。

島田 何か「わかりやすく見せられる形」は模索しているのですか。

太田 テクノロジーを使って、剣先の軌跡を可視化する「フェンシング・ビジュアライズド」が1つの回答ではあって、グローブ座ではデモンストレーションをするところまではたどり着きました。それとはまったく違う方向性ですが、既存の3種目ではない新しい種目を作るべく模索しているところです。

 発想をガラリと変えて、同時に4対4で対戦できたり、あるいは8人同時対戦で1人になるまで戦うといったサバイバル形式、しかもコロシアムのような円形競技場を舞台にするとか、「フェンシング=1対1の対戦」という概念を変えてもいい、と思っています。

島田 面白い! 大きなチャレンジですね。
(対談後編に続く)

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