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【NSBC第3期 スペシャルトーク】
太田雄貴×島田社長、特別対談前編。
成功するスポーツ組織の共通項って? 

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

PROFILE

photograph byKiichi Matsumoto

posted2019/06/14 08:00

【NSBC第3期 スペシャルトーク】太田雄貴×島田社長、特別対談前編。成功するスポーツ組織の共通項って?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

特別対談で大いに語り合った日本フェンシング協会・太田雄貴会長(左)とBリーグ千葉ジェッツの島田慎二社長。

価格設定はシビアに見ていく。

島田 値付けは経営の一番最たる仕事で、難しいものです。クラブの価値と、ジェッツの試合を会場で観たいと思っている人たちがどれぐらいいるのか、予測をしていく中で価格を決定しています。

 現在、ホームゲームでは平均5000人程度動員していますが、9000名程度の方々がうちの試合を見たいと思っていて、5000人埋まっているという感覚です。この数字ですと、まだ安定性はありません。今、目指しているのは潜在的に5万人程度見たい方々がいて、5000人埋まっているという状況です。

 それが実現できれば、現在の価格を倍にしても動員できることが数値上では証明されます。ただ実際に倍額にするつもりはありませんが、ここから2、3年で潜在的数値を9000人~1万人、2万人、3万人と増加させたいと思っています。4、5年後に新アリーナが完成(予定)した時に、1万人のアリーナが常時埋まるシミュレーションを行いながら、スタートアップから8、9割埋まる状況を作りたいですね。

 VIPルームも設置するので総収入は倍どころではなく大きく増えるとは思いますが、楽観視はしていません。シビアに状況を見ながら変更していく予定です。

太田 新アリーナについて、試合開催時以外の稼働は、アーティストのライブなども予定されているのですか。

島田 そうですね。ぜひフェンシングの大会でも使用していただければ!

「民」で作るアリーナの強み。

太田 フェンシングの大会はここ2年ほど、東京ではずいぶん人を集められるようになりましたが、1万人のロケーションは現実としてはなかなか厳しいですね。東京オリンピックでは幕張メッセが会場となりますが、オリンピックだからこそ成立するわけで、日常的にあの規模で開催できるかといえば疑問が残ります。ですから全日本選手権も課題を1つずつ潰していった結果、700人規模のグローブ座で行うことになったのです。

島田 グローブ座での開催は非常に画期的でしたよね。新アリーナを作っても、われわれは基本的に1シーズンで30試合程度しかホームゲームを行いません。ですから残りの330日は他のスポーツやコンベンション、アーティストのライブ等を誘致しなければ採算が取れません。これまで前例もないのでどうなるか分かりませんが、いろいろなことにチャレンジしていくつもりです。

太田 今は改修等のためアリーナ不足とも言われていますしね。来年の東京オリンピック以降はどこも使用が可能となります。その時に「このアリーナがいいな」と思わせる、いわば“選ばれる”アリーナでありたいですよね。そういった意味では設計も大切なポイントになってくると思います。

島田 我々のホームなのでバスケにとって良い環境であることは大前提ですが、その上で、他の興行を行う場合にもいかにフィットするかが大切になると思います。おっしゃる通り、アーティストに選んでいただけるような作りにしなければ難しいですし、そこはこだわりたいですね。逆にそれこそ「民」で作る強みかなとも捉えています。

 それから、アリーナができる前にも、フェンシング協会と一緒に何かできることはあるかもしれないな、と考えているところです。これまでも試合前やハーフタイムを使い、アーティストのミニライブやまったく違うプロスポーツのイベントを組み合わせ、さまざまなエンターテインメント・プログラムを作っています。今後、コラボしていくことはできるようにも思うのですが。

【次ページ】 「魅せられる」レベルを求めて。

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