太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
【NSBC第3期 スペシャルトーク】
太田雄貴×島田社長、特別対談後編。
革新を生むことでスポーツが変わる。
posted2019/06/14 08:05
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph by
Masao Kato/AFLO
2017年の会長就任以来、フェンシングを「ベンチャースポーツ」と位置付け、さまざまなアイデアで業界に新風を吹き込み、確たる存在感を示している日本フェンシング協会の太田雄貴会長。
Number Sports Business Collegeで連載を持つ2人の「改革者」のスペシャルトークは、前編に続き後編も白熱。2人はいま、組織を運営する上で、ある共通するキーワードを心の中に秘めていた……。
島田 東京オリンピック誘致の時もそうでしたが、太田さんはビジネス感覚を持ちながら公益社団法人の中で改革を進め、かつ、興味深い取り組みで観客の満足度を高めているように感じています。太田さんはこの先、何を見据えているのでしょうか。
太田 会長に就任してこの2年間は攻めの経営を行ってきました。たとえば、フェンシング協会と日産自動車の取り組みもその一例です。フェンシングは電源がない場所では競技を行えない、という課題がありました。実は日産の電気自動車「リーフ」の動力となっている蓄電池は家庭用電源として供給できるのですが、それを世の中の7割程度の方は知らないままでいる。
そこでわれわれの課題と、日産の「リーフの電力活用法の認知」という課題をドッキングさせ、「リーフがあれば世界中どこにいても電源が確保でき、フェンシングができます」といった営業を仕掛けていきました。その結果、スポンサー年間契約に至ったのです。日産自動車は、誰もがご存知のナショナルブランドです。そういったところとしっかり組んでいくことで、フェンシングの価値をあげていく。これはマーケティング戦略の1つでもあります。
脱・太田&島田を推し進めていく。
島田 ビズリーチさんと組んで、マーケティングの人材なども意識して外から採用していますよね。
太田 組織を強化していく上で、外部の血を入れることは大切なことだと考えています。ビズリーチで採用した副業・兼業チームを含めて、関係者全員が一体となって組織の最適化を進めています。特にいま意識しているのは、公益法人として、会長に依存しすぎない組織設計を見据えて改革を行っていくことです。将来に備え、組織の強化と同時に、「脱・太田雄貴」を進めていきたいです。
島田 深く共感できる部分です。実は私の最近の合言葉も「脱・島田」なんです。改革を行うのはこちら側の思いや勢いで進められますが、クラブの持続的成長、持続的発展が可能な状況を作るには、個人としてではなく、組織として行っていく必要があります。リーダーはもちろん大事ですし、私もまだまだがんばります。でも、そこに依存しすぎてもいけない。私も今、まさに「脱・島田」まっただ中です。
組織が長きに渡って発展する上で、私がいる時代が長ければ長いほど、次の時代が苦しくなると思っています。私がまだ力があるうちに、次代にバトンタッチをしなければなりません。そういった意味で太田さんのように、最初から急ピッチで改革を進めながら「脱・太田」を前提に設計し、次なる未来を見据えて組織を牽引しているのは、本当に素晴らしいことだと思います。