マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
なぜこの選手が育成だったのか……。
巨人・山下航汰が近々“来る”気配。
posted2019/06/02 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
おそらく、もう間もなく巨人の一軍メンバーにその名を連ねてくるはずの、イキの良いルーキー・バットマンがいる。
「山下航汰」といって、高校野球ファンの方なら「おお、あの山下か!」と思い出していただけるだろう。
今は176センチ、80キロまでボリュームアップ。健大高崎高でクリーンアップやリードオフマンをつとめた左打ちのスラッガーである。
昨秋のプロ野球ドラフト会議。
1位指名の入札で、11球団が大阪桐蔭・根尾昂(現・中日)、藤原恭大(現・千葉ロッテ)、報徳学園・小園海斗(現・広島)の高校生野手に集中したのもびっくりしたが、もっと驚いたのが、健大高崎・山下航汰が「育成ドラフト」で指名されたことだった。
バッティングは根尾、藤原、小園級。
私自身の評価としては、根尾、藤原、小園……「1位トリオ」から、そんなに離れていないバッティング技術とスイングスピードを持った打者。そうにらんでいたし、スカウトの評価も「上位じゃないけど、指名はありますよ」。それぐらいの評価でそろっていた。
“上位”じゃない理由については、一様に「足と肩が、そこまでじゃない。守る場所があるかどうか……」。バッティング以外の要素で、あまり積極的ではないようだった。
実は、ほんとにそうなのかなぁ……と思っていた。
中肉中背、見た感じ確かにあまり足が速そうな印象はなかったし、塁間のスピードは「速い!」とは思えなかったが、打球が外野を破ってロングヒットになったときの加速と、それ以上にベースをターンするときの鮮やかな体の切り返しには、「機動破壊」の健大高崎仕込みの秘訣が隠されているように見えていた。
ただの「よく打つだけのバッター」じゃない。肩だって、強肩を売りにするような選手じゃないが、捕って投げる敏捷性と、捕球した野手がタッチプレーのしやすそうなポイントにポンと置いてあげられる“オトナの送球”ができるヤツ。マイナスポイントには見えなかったものだ。
それだけに「育成ドラフト1位」という評価には、正直、驚きより“憤り”のような感情が湧いて、ドラフト直後には、記事にもした。